Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成14年度目次

茶園における窒素溶脱の実態


[要約]
茶園における窒素の溶脱は、施肥窒素量が増加すると溶脱窒素量、浸透水の硝酸態窒素濃度とも増加する。また、降水量が多いと窒素溶脱量は多くなり、多雨期である梅雨時期には年間窒素溶脱量の半分程度が溶脱する。有機配合と硫安を主体とした施肥法では施肥窒素に対する窒素の溶脱割合が高い。

[キーワード]
窒素溶脱、施肥窒素量、降水量、多雨、有機配合と硫安を主体とした施肥法、窒素溶脱割合

[担当]
熊本県農業研究センター茶業研究所

[連絡先]電話096-282-6851	
[区分]九州沖縄農業・茶業、生産環境	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
近年、農耕地由来の施肥窒素による地下水の硝酸態窒素汚染が問題となっている。茶は、多肥栽培の代表的な農作物とされており茶園からの施肥による地下水の硝酸態窒素汚染が懸念されている。そこで茶園からの窒素溶脱の実態を解明するため、ライシメータに茶を植栽し、施肥窒素量を変えて肥培管理を行い、ライシメータからの溶脱成分を測定することにより施肥窒素量と溶脱窒素量との関係について解析した。

[成果の内容・特徴]
  1. 年間窒素溶脱量は、無施肥の場合3kg/10aであるが、年間施肥窒素量45〜120kg/10aで21〜73kg/10aと施肥窒素量が増加すると共に増加し、土壌浸透水の年平均硝酸態窒素濃度も増加する(図1)。

  2. 年間降水量に対する地下1mでの年間浸透水量の割合は、年間施肥窒素量45kg/10a以上では、60%前後であるが、無施肥で茶樹の生育が劣る場合、71.3%とやや高くなる(表1)。

  3. 年間における窒素溶脱量の変動は、降水量の変動と同じ傾向を示し、降水量が多いと窒素の溶脱量は多くなり、特に多雨期である6〜7月の期間は年間窒素溶脱量の1/2程度が溶脱する(図2)。

  4. 茶園における施肥窒素の溶脱割合は、有機配合と硫安を主体とした施肥法では年間施肥窒素量45kg/10aでも46.9%と高率であり、施肥窒素量の増加と共に高くなり、年間窒素施用量60kg/10a以上では50%を超過する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 茶園における窒素溶脱防止技術の基礎資料となる。

  2. 年平均降水量1,975mm(1992〜2001年の平均)の降水条件でライシメータ(1区:19.44m2、土層の深さ:1m、土壌の種類:赤黄色土)に茶(やぶきた)を定植し、定植後3年目から表1のとおり肥培管理した茶園における知見である。

[具体的データ]

表1 試験区の施肥設計


図1 窒素溶脱量と浸透水の硝酸態窒素濃度(1992〜2001年の10年間の平均値)


図2 N60kg区での窒素溶脱量と降水量)(1992〜2001年の10年間の平均値)


図3 施肥窒素に対する溶脱窒素の割合(1992〜2001年の10年間の平均値)


表2 降水の浸透率と茶樹の生育量

[その他]
研究課題名:農耕地からの窒素負荷軽減のための新技術の開発と合理的施用技術の体系化予算区分:県単
研究期間 :1999〜2002年度(1990年度〜継続)


目次へ戻る