チアメトキサム粒剤によるミカンキジラミの春期密度抑圧効果
- [要約]
- ゲッキツにおいてカンキツグリーニング病の媒介虫ミカンキジラミを防除するため、新梢およびミカンキジラミの発生が少ない1〜3月に、チアメトキサム粒剤を幹周りに処理すると、ミカンキジラミの春期の発生を抑圧し,以降の発生にも影響を及ぼす。
- [キーワード]
- ミカンキジラミ、チアメトキサム粒剤、ゲッキツ、カンキツグリーニング
- [担当]
- 鹿児島県農業試験場・大島支場・病害虫研究室
[連絡先]電話0996-52-3545
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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カンキツグリーニング病の罹病樹は集落内のカンキツで発見される場合が多い。南西諸島では、媒介虫であるミカンキジラミの好寄主となるゲッキツが生け垣に多く植栽されており、発生地区では感染拡大防止策としてゲッキツでの本虫の防除が重要である。現在、MEP乳剤などで防除を行っているが、残効性、労力面などで苦慮している。そこでゲッキツでの本虫の発生消長を調査し、その結果に基づき防除適期を予測して、長期残効性が認められたチアメトキサム粒剤の効果を検討した。
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[成果の内容・特徴]
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生け垣のゲッキツでは、新梢の発生盛期が年間5回程度あり、ミカンキジラミの発生もこれに同調した。新梢および本虫の発生は、春期以降急激に増加する傾向があり(図1)、キジラミの発生を未然に防ぐには、1〜3月が防除適期であると推測された。
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現行の防除剤であるMEP乳剤を1月下旬、2月中旬および3月中旬に散布した場合、3月中旬以降は無処理と同程度の発生となり、効果は認められなくなる(図2)。したがって、密度回復が早く、キジラミの発生期間にわたって密度を抑圧するためには、年間相当数の散布が必要であると考えられた。
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チアメトキサム粒剤を1月下旬、2月中旬および3月中旬に1樹あたり40gを幹周りに処理した結果(処理後1〜1.5リットル/樹灌水)、春期の発生は,いずれも無処理と比較し、顕著な密度抑圧効果を示した(図3)。さらに,春期以降も長期間低密度状態を維持した。放虫試験での成虫に対する残効期間は30〜40日程度であることから,春期の密度抑圧が以降の発生に大きく影響したことが示唆された。以上の結果から、チアメトキサム粒剤による春期密度抑圧は、カンキツグリーニング病の発生地区での効率的な防除法として有望である。
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[成果の活用面・留意点]
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チアメトキサム粒剤の処理後のゲッキツ葉内濃度を測定した結果、防風樹などの大木では、成虫の致死濃度まで上昇しなかったため,防除が困難であると考えられた。本試験は樹高150cm前後、樹の直径10cm前後の生け垣での試験結果である。
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[具体的データ]
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図1 ミカンキジラミおよびゲッキツ新梢の発生消長(奄美大島:2003年)
図2 MEP乳剤の散布時期別ミカンキジラミ幼虫数の推移
図3 チアメトキサム粒剤の処理時期別ミカンキジラミ幼虫の推移
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[その他]
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研究課題名:ミカンキジラミの発生生態の解明とその防除
予算区分 :国庫
研究期間 :2003〜2005年度
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