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焼酎製造後の凝縮液を利用した豚汚水の脱窒処理技術の開発


[要約]
焼酎製造業から排出される凝縮液を利用した新たな豚汚水の脱窒処理技術の検討を行った。窒素負荷1.6〜4.1kg/m3/日において脱窒率90%以上を確保、最終処理水のT-Nは一律排水基準値100mg/L以下までの処理が可能、窒素除去に必要な凝縮液量は300〜400kg/kg-Nである。

[キーワード]
焼酎凝縮液、脱窒、窒素負荷、膜分離活性汚泥法、USB

[担当]
大分県農林水産研・畜産試験場・中小家畜環境担当

[代表連絡先]電話0974-22-0673	
[区分]九州沖縄農研・畜産草地(畜産環境)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
養豚業より排出される汚水は高濃度に窒素を含有し、窒素規制をクリアするためには大型の処理設備及び高価な薬剤が必要となる。そこで、膜分離活性汚泥法と上向流式脱窒処理システム(USB)により、コンパクトな豚汚水の窒素処理システムの開発をめざした。膜分離活性汚泥法は、通常の活性汚泥法よりも負荷を大きく取ることが可能であり、さらに沈殿槽が不要となる。USBは、窒素負荷を通常の5倍程度高くすることが可能となり、脱窒反応に必要な水素供与体として焼酎製造後の凝縮液を用いることができる。このシステムにより、畜産業、焼酎製造業が盛んな九州地区の窒素処理及び産業廃棄物低減に寄与できる。

[成果の内容・特徴]
  1. 豚尿汚水の既設処理設備に膜分離活性汚泥及びベンチ試験結果より設計・製作したUSBシステムを設置し(図1)、処理性能及び運転条件の検証を行った。膜分離活性汚泥法は、窒素濃度が400〜1100mg/Lと高濃度で且つ変動があったが、硝化率は安定して80%以上(重炭酸ナトリウムでpH調整(8±1)により90%以上)で推移する。(図2
  2. USBは窒素負荷1.6〜4.1kg/m3/日と計画値(0.8〜3.1kg/m3/回)以上の負荷で変動もあったが、凝縮液を適正量添加することで、脱窒率95%以上が得られ、処理水T-Nを100mg/L以下まで低減できる。(図3表2

  3. 凝縮液は平均BOD8600mg/Lであり、密閉できる容器で保管すれば、性状変化が防止できる。窒素処理における水素供与体としての利用が可能である。また、窒素処理における凝縮液の必要量は300〜400kg/kg-Nである。(表1

  4. 母豚250頭規模において、今回開発した技術を取り入れた汚水処理施設で試算すると、標準活性汚泥法と生物脱窒処理法を組み合わせた施設より水槽容積で65%、設置面積で47%低減できる。

  5. 九州地域での大規模養豚農家において処理しなければならない窒素量は7,803t/年、凝縮液の発生量は17.3万t/年と推計すると、焼酎凝縮液を水素供与体とすることで8.8%の窒素を処理できる。(図4

[成果の活用面・留意点]
  1. 今回開発したシステムは、汚水処理施設を新設や追加設置する場合、焼酎凝縮液を使用する開発システムを導入することができる。

  2. 上向流式脱窒処理システムは、凝縮液だけでなく水素供与体の液体であれば活用可能である。

[具体的データ]

図1 膜分離槽及び凝縮液利用型USBシステムの概略
   
  図2 消化率、窒素負荷量の経日変化


図3 USBの窒素負荷と脱窒率


表1 窒素処理に必要な凝縮液量


表2 USB処理水の水質


図4 焼酎凝縮液の年間推定発生量

[その他]
研究課題名:焼酎製造後の凝縮液を利用した豚汚水の脱窒処理技術の開発
予算区分 :国庫(H17先端技術を活用した農林水産研究高度化事業)
研究期間 :2005〜2006年度


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