[ ここから本文 ]
この方法はリノール酸の自動酸化に伴い生じるリノール酸過酸化物が、 β-カロチンの二重結合と反応することによって、β-カロチンの色が消 失することを利用したものである。リノール酸とβ-カロチンに界面活性 剤を添加してエマルジョンを形成させ温度を上げることによってリノール 酸の自動酸化が促進され、1時間以内の反応時間でも十分に抗酸化性が測定 でき、また試料液が少量で済むこと、一度に数点の試料についての測定が できることなどの特徴を持つ、簡便な方法である。 準備 【試薬】 (1)リノール酸溶液:1gのリノール酸をクロロホルムに溶解して10mlとする。 (2)β-カロチン溶液:10mgのリノール酸をクロロホルムに溶解して10mlと する。 (3)ツイーン40溶液:2gのツイーン40をクロロホルムに溶解して10mlとする。 (4)リン酸緩衝液:0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液ΦH6.8) (5)BHA標準溶液:80%のメタノール溶液にBHAを1mg、3mg、5mgそれぞれ溶解 して100mlとする。 【リノール酸-β-カロチンエマルジョンの作製】 100mlの三角フラスコにリノール酸溶液を0.1ml、β-カロチン溶液0.25 ml、ツイーン40溶液0.5mlをとり、このフラスコに窒素ガスを吹き込みク ロロホルムを完全に飛した後、45mlの蒸留水を加えて溶解する。次に、 この溶液に5mlの0.2Mリン酸緩衝液を加える。 【反応液の作製】 試験管にコントロールとしての蒸留水と3段階の濃度のBHA標準液、及 び試料液をそれぞれ100μl採取する。試料液については、2連にて実施す る。従って、試験管番号1はコントロール、2は1mgBHA溶液、3は3mgBHA溶 液、4は5mgBHA溶液、5と6は試料液1、7と8は試料液2、9と10は試料液3と なる。次いで、4.9mlのりノール酸-β-カロチン溶液をピペットマンを 用いて勢い良く加える。 操作の実際 【酸化の促進と吸光度の測定】 試験管立を50℃の浴槽に入れておき、試料番号1番すなわちコントロー ルの470oの吸光度を測定し、素早く試験管に反応液を戻した後、直ちに 恒温浴槽内の試験管立てに立てる。次いで2番目の試験管の吸光度を測定 し、同様に高温浴槽に入れ、3番目、4番目と10番目まで測定を行う。ス トップウオッチは1番目の試験管の吸光度を測定して浴槽に移動した時に スタートさせ、以後10分毎に吸光度の減少を測定する。この方法では、 試験管番号1番から10番までの反応時間を揃えるために、常に一定のリズ ムで吸光度を測定する必要がある。1番から10番までの測定を約2分程度 で終えるのが望ましい。 注)吸光度の測定に当たって、試験管の外側には浴槽の水が付着するので、 この付着水がキユベットに入ってしまうことを防止するために、測定の 際には常に試験管の底の水をすばやくふき取るとよい。 (津志田藤二郎)
[ ここまで本文 ]