牛疫高死亡率、治療法なし

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家畜
伝染病

牛、水牛、鹿、めん羊、山羊、豚、いのしし

特徴

牛疫牛疫は家畜の法定伝染病で、パラミクソウイルス科モルビリウイルス属の牛疫ウイルスによって起こる牛やめん羊、山羊、豚など偶蹄類動物の病気である。

牛では感染後2~5日を経て、急に発熱し、流涎(よだれ)や鼻漏(鼻水)とともに下痢が起こる。口や胃腸などの消化器、鼻や肺などの呼吸器をはじめとする全身の粘膜が冒され、表面がただれて出血を起こす。ウイルスは唾液(だえき)や鼻汁、糞尿、乳汁などに混ざって排出され、新たな感染を起こす。リンパ系組織にも激しい病変が観察される。

牛疫は伝染力が強く、感染した動物の死亡率も極めて高い。かつて牛疫の流行が繰り返し起こった欧州では、18、19世紀の約180年間に約1億8,000万頭の牛が死んだといわれている。


対策

治療法はない。日本での最後の発生は1922年である。世界的には2001年にケニアで確認された発生が最後である。

1994年に国連食糧農業機関(FAO)によって開始された世界的牛疫根絶計画(GREP)により、2011年に撲滅が宣言された。このことにより、天然痘に続いて人類が根絶を達成した二つめの疾病となった。

[写真:牛疫に罹患した牛は膿性の鼻漏と激しい下痢が観察される(出典:動物衛生研究所研究報告)]

(動物衛生研究部門 木村久美子)

参考情報

・家畜の監視伝染病 牛疫


情報公開日:「家畜疾病図鑑」『日本農業新聞』 2010年11月24日、14面に掲載。

情報更新日:2021年3月15日

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