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なたね新奨励品種「アサカノナタネ」


福島県農業試験場・種芸部・畑作研究室
[部会名] 総合農業
[分科会名]冬作物
[分類]  (1)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. アサカノナタネは、昭和44年度に福島県農業試験場(農林省指定菜種育種試験地) において、草型が良好で多収性の無エルシン酸なたね育成を目的に「チサヤナタネ」 を母、「Z.E.N」を父として人工交配を行い、以後系統育種法により選抜固定を 図ってきた系統である。昭和54年度に本県からF10代で東北農業試験場に 引き継がれ、平成2年度の世代は雑種第21代となる。旧系統名は東北82号である。
    2. 草型は農林16号と同じII型である。草丈は農林16号並からやや長く、「中」に属する。 第一次分枝数、総分枝数とも農林16号より多い。穂長は短く、一穂莢数も多く、 着莢密度が高い。莢長は農林16号より短く、一莢結実数も農林16号より少ない。 粒色は黒色で粒大も整っている。
    3. 開花期と成熟期は農林16号よりやや遅く、中生である。耐倒伏性は、農林16号より 強く、「強」に属する。
    4. 子実収量は農林16号並であり、千粒重は農林16号並からやや重い。
    5. 脂肪酸組成は、エルシン酸の含有量が「無」である。
    表1 農試本場における成績
    表2 現地試験成績
    表3 脂肪酸組成
  2. 技術・情報の適用効果
    本品種はエルシン酸の含有率が「無」であり、食用油として供することができ、 消費者、実需者、生産者の要望に応えることができる。
    また、村おこし運動のひとつとしてなたね(食用油)を取り上げる地域があり、 これら地域での転換畑や大規模開畑地への導入が期待できる。
  3. 適用の範囲
    福島県 浜通り、中通り(標高350m以下の地帯)
  4. 普及指導上の留意点
    1. 本品種は無エルシン酸なので、エルシン酸を含む交雑可能な作物などから隔離して 栽培する。
    2. 種子は無エルシン酸であることを保証したものを使用する。
    3. 耐倒伏性は農林16号より優っているが過度の密植(各播で播種量a当たり50g以上)や 多肥栽培は避ける。
    4. 越冬前に十分な生育量を確保するために適期播種を励行する。


[その他の特記事項]
研究課題名:なたね優良品種選定試験
予算区分 :県単
研究期間 :昭和62年〜平成元年
発表論文等:なし