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KIT人工飼料を用いた蚕の1〜3齢無菌飼育法
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[要約]
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稚蚕期の無菌人工飼料の飼育は、無停食で稚蚕飼育中に生育の乱れが生じるため
4・5齢中に遅蚕を排除しながら飼育する必要がある。
本飼育法は、結繭中はやや劣るが、繭質に遜色無く、
現行の稚蚕飼育と比較して極めて省力的である。
また、飼料素材の自給も可能であり、飼育コストの削減が期待できる。
岩手県農業研究センター・園芸畑作部・蚕桑技術研究室
[連絡先] 0197-68-4420
[部会名] 蚕糸
[専門] 飼育管理
[対象] 蚕
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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養蚕規模の縮小により、稚蚕共同飼育所の休止と広域利用が進められているが、
依然飼育所一ヶ所当たりの飼育量は減少し、飼育コストの上昇が懸念されている。
無菌人工飼料育では、掃立以後4齢起蚕までの飼育管理がほとんど不要となり、
飼育コストの削減が期待できるため、
KIT人工飼料の稚蚕共同飼育への利用について検討した。
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[成果の内容・特徴]
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蚕種をエタノールと高度さらし粉水溶液で消毒し、
無菌的に催青する事により無菌蟻蚕を得る事ができる。
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人工飼料は97度C60分蒸煮滅菌する。飼育施設は超微粒子噴霧機を使った
ホルマリンの無人消毒により飼育環境の無菌化が実現できる。
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飼料水分率が70%の時、稚蚕の生存率が高い(図1)。
飼料表面やネットに水滴が付着すると減蚕が発生するため、
飼料蒸煮後に被覆フィルム、ネット等の水滴を拭き取る。
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無菌人工飼料育した蚕は4齢起蚕時までに
1日から1日半程度の発育の不揃いが生じるが、
4・5齢餉食時及び除沙時に分離可能である(表2)。
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遅蚕を排除することにより熟蚕の発生は良く揃い、上蔟作業は容易である。
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1〜3齢経過は、無停食で飼育した場合、対照区より1日経過が短縮する
(表1)。
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慣行の稚蚕飼育法と比較して、繭の計量形質と繭糸質は差が無い
(表1)。
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人工飼料素材としての桑葉粉末は、パイプハウスを使った天日乾燥で調製可能である
(表3)。
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[成果の活用面・留意点]
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現行の稚蚕共同飼料に利用した場合には、省力化が図られるが、
新たに無菌室・クリーンブース等の導入、または施設の改造が必要である。
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簡易な無菌飼育法を検討することにより、
農家個別に稚蚕飼育を実施することも期待できる。
[その他]
研究課題名:「蚕糸・昆虫3」1-(2)無菌人工飼料育技術
予算区分 :県単
研究期間 :平成9年(平成7年〜9年)
発表論文等:蚕の人工飼料無菌飼育技術
4.1〜3齢人工飼料・4〜5齢桑育の飼育成績、
東北蚕糸研究報告(22)、p7、1997