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[背景・ねらい] |
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水稲の湛水直播栽培においては、出芽、苗立ちを安定化させるため、幼芽の早い生長が求められている。湛水条件における幼芽の生長速度には品種間差が存在するが、その生理的な要因は明らかとなっていない。スクロースシンターゼは植物体内でスクロースの分解反応を行い、嫌気条件において活性が上昇し、嫌気条件でのエネルギー生産を担うとされる酵素であるが、本研究では、この酵素活性の強さと水稲幼芽の生長速度との関係について解析し、湛水条件での幼芽の生長に影響をもたらす要因について、基礎生理的な面から知見を得ることを目的とする。 |
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[成果の内容・特徴] |
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1. |
水稲発芽種子を嫌気的条件に置いた場合、好気的条件と比較して幼芽中のスクロースシンターゼ活性が高まり、その上昇程度には品種間差が認められる(図1)。 |
2. |
湛水条件において高いスクロースシンターゼ活性を持つ品種は、鞘葉伸長速度が速い傾向がある(表1)。 |
3. |
幼芽中のスクロースシンターゼ活性が強い品種は、圃場に湛水直播した場合の地上部の生長が早い傾向がみられ、播種後落水して1月後の地上部乾燥重と幼芽中のスクロースシンターゼ活性の間には、正の相関関係が認められる(図2)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
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1. |
幼芽のスクロースシンターゼ活性には、年次間差が存在し、種子の登熟条件、乾燥条件等の影響があると考えられる。 |
2. |
本成果は、嫌気ストレス下での植物体内でおこる生理機構について、基礎研究を進める上での知見となる。 |
3. |
本成果は、水稲湛水直播栽培において初期生育の良好な品種の選抜方法を作出するための、基礎的知見として活用できる。 |
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