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米卸売業者の取扱量の変化と仕入時に重視する項目
[要約]
米の仕入れ量は、大規模卸は増加、小規模卸は減少しており、二極化が見られる。業務用の米は価格の安さ、一般消費者向けは、全般に品質のよさを求めているが、大規模卸の場合、安定した量の供給や品質のばらつきの少なさを重視している。
[キーワード]
米、米卸売業者、重視項目、一対比較法
[担当]
宮城農園研・情報経営部
[代表連絡先]
電話022-383-8119
[区分]
東北農業・基盤技術(経営)
[分類]
行政・参考
[背景・ねらい]
平成16 年4月の食糧法改正により、米の流通は大幅に自由化されることとなった。このような背景から、実需者(以下:米卸)の仕入動向は大きく変わってきている。そこで、(社)日本精米工業会会員を対象にアンケートを実施し、全国の米卸の仕入動向や米を仕入れる際の重要な項目及び品質に関する重要項目などを明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 取扱規模別に米の仕入状況を見ると、年間5万トン未満の米卸は、仕入れ量が以前より「減少した」との回答が多いが、5万トン以上の米卸になると「増加・もしくは変わらない」との回答が多く、取扱量が多い米卸の仕入れ量が増加している(図1左)。
- 販売用途については、取扱数量年間3万トン未満の米卸は、一般消費者向けを主としているところが多いが、一部に業務用を主としている卸も見られ、米卸によって用途に差が見られる。3万トン以上10 万トン未満の米卸は主に一般消費者向けの販売が多く、10 万トン以上の米卸では業務用に販売している割合が高くなる傾向がある(図1右)。
- 米卸が仕入時に重視する項目について、AHP の一対比較法により一般消費者向けの米と業務用の米の重要度を求めた結果、一般消費者向けの米は「品質が良いこと」を重視し、業務用は「価格が安いこと」を重視している。しかし、年間取扱量25 万トン以上の大規模卸の場合には、一般消費者向けに「品質が良いこと」よりも「安定した量の供給」を重視する傾向がある(表1)。
- 品質に関する重視項目については、一般消費者向けも業務用も「整粒歩合が高いこと」を重視している。しかし、大規模卸の場合には一般消費向け、業務用ともに「タンパク含有率のばらつきが少ないこと」を重視している(表2)。
- 一般消費者向けの米と業務用の米では、米卸の重視項目が異なることから、販売ターゲットに合わせた品種選択や栽培方法を考慮する必要がある。また、大規模卸の場合、ロットを確保し安定した量を出荷するとともに、タンパクのばらつきの少なさ、すなわち品質が均一でばらつきのない米を出荷していく必要がある。
[成果の活用面・留意点]
- 農協や生産者等が米を出荷する際の参考データとして活用できる。
- 分析手法は「AHP の一対比較法」によるものである。この方法は、複数の物(項目)を一度に比べるのではなく、全ての項目を一対ずつ、どちらがどの程度重要なのか比較していく方法であり、各項目の重要度を定量的に測定することができる。
[具体的データ]



[その他]
- 研究課題名
- 農業生産構造及び農産物流通等の動向分析
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2002 〜 2006 年度
- 研究担当者
- 泉澤弘子、櫻井晃治