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飼料用トウモロコシの有機栽培に活用できるシロクローバのリビングマルチ

[要約]

シロクローバのリビングマルチにより、飼料用トウモロコシを無農薬で栽培することができる。また、トウモロコシの播種の前に、シロクローバの上から堆肥を表面施用することで、トウモロコシの収量がさらに増加し、無化学肥料栽培が充分可能となる。

[キーワード]

リビングマルチ、トウモロコシ、有機栽培、シロクローバ

[担当]

東北農研・寒冷地飼料資源研究チーム

[代表連絡先]

電話019-643-3543

[区分]

東北農業・畜産、畜産草地

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

食の安全性に対する社会的関心の高まりに伴い、飼料用トウモロコシの有機栽培に対する要望が増加している。リビングマルチ栽培とは、主作物の畝間に被覆植物を導入することで、除草剤を用いることなく雑草の抑制を図る栽培法である。そこで、シロクローバを被覆植物として用いたリビングマルチによるトウモロコシの有機栽培を、場内試験および実規模での現地試験により実証する。

[成果の内容・特徴]

  1. 被覆植物としてあらかじめ定着させておいたシロクローバの立毛中に、トウモロコシを不耕起播種し、シロクローバとの生育競合を避けるため、シロクローバ地上部をトウモロコシの出芽前にディスクモア等で刈り払う(図1)。
  2. リビングマルチ栽培により、除草剤を用いることなくトウモロコシ収穫時の雑草が大幅に減少し、除草処理を行った耕起栽培と同程度のトウモロコシの乾物収量が得られる(表1)。
  3. 実規模栽培においても、リビングマルチ栽培により、トウモロコシ収穫時の雑草(ブタクサ、ホソアオゲイトウなど)が大幅に減少し、トウモロコシの乾物収量が高まる(図2表2)。さらにトウモロコシ播種当年の春に、シロクローバの上から堆肥を表面施用することで、トウモロコシの乾物収量とTDN 含量がさらに高まる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 場内試験は、岩手県盛岡市の東北農業研究センター内圃場(黒ボク土)、現地試験は有機農産物のJAS 規格に準拠した飼料生産を行っている青森県横浜町の圃場(2ha:砂丘未熟土)において行った。
  2. シロクローバは2kg/10a 程度を越冬可能な時期に播種する。刈り払ったシロクローバは圃場から搬出する必要はない。
  3. 東北北部ではトウモロコシの収穫期とシロクローバの播種期が重なるために、トウモロコシの一年一作は出来ない。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
飼料自給率向上に向けた多様な寒冷地飼料資源の活用技術の開発
予算区分
交付金プロ(有機短角)、基盤
研究期間
2002〜2009 年度
研究担当者
出口新、魚住順、金子真、嶝野英子
発表論文等
魚住ら(2006)東北農研研報106:15-26
Deguchi S et al.(2007)Plant and Soil 291: 291-299