研究所トップ研究成果情報平成21年度

食味特性が「ササニシキ」に類似した耐冷性が強い良食味水稲新品種候補「東北194号」

[要約]

水稲「東北194号」は寒冷地中部では中生の晩に属し、炊飯米特性と食味が「ササニシキ」 に類似したあっさりした食感の耐冷性が強い良食味系統である。東北中南部の平坦地において 「ササニシキ」に替わる良食味米の安定生産が期待される。

[キーワード]

イネ、東北194号、中生の晩、良食味、炊飯米特性、ササニシキ、耐冷性

[担当]

宮城古川農試・作物育種部

[代表連絡先]

電話0229-26-5105

[区分]

東北農業・作物(稲育種)、作物

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

宮城県の平坦地では、中生の良質良食味品種「ササニシキ」が長年普及してきたが、耐冷性、耐倒伏性、いもち病抵抗性、穂発芽性等が不十分で、気象変動の激化により急速に作付けを減らし、「ひとめぼれ」に転換している。しかし、あっさりとした食感の「ササニシキ」への根強い要望があるため、耐冷性・耐倒伏性・穂発芽性等に優れる、「ササニシキ」の食味を継承した良質良食味品種の開発を目指す。

[成果の内容・特徴]

  1. 「東北194号」は、宮城県古川農業試験場において、「ササニシキ」に替わる品種を目標とし、「ササニシキ」を母、「ひとめぼれ」を父として、2001年6月に人工交配を行い、その後代の小集団から炊飯米特性と耐冷性を重点に選抜して育成した系統である。
  2. 出穂・成熟期は「ササニシキ」並で「ひとめぼれ」よりやや早く、育成地では“中生の晩”である(表1)。
  3. 「ササニシキ」に比較して、稈長は短く、穂長は長く、穂数は同程度、草型は“穂数型”である。耐倒伏性は「ササニシキ」よりやや強い“やや弱”で、収量性は「ササニシキ」並である(表1)。
  4. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“+”と推定され、圃場抵抗性は葉いもちは“やや弱”、穂いもちは“弱”で「ササニシキ」並である。障害型耐冷性は“極強”、穂発芽性は“難”である(表1)。
  5. 玄米千粒重は「ササニシキ」並かやや小さく、玄米品質は「ササニシキ」並かやや優る“上下”である。タンパク含有率は「ササニシキ」よりやや低い。食味は粘りはやや弱いが軟らかく「ササニシキ」の食感に近い(表1)。
  6. 炊飯米の表層物性は「ひとめぼれ」より軟らかく、粘りが弱く、付着量も少なく「ササニシキ」に近い特性を示し、炊飯米の膨張率も大きい(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 宮城県で、「ササニシキ」及び「ひとめぼれ」の一部に替えて普及が見込まれる。
  2. 寿司用、おにぎり用、弁当用等の和食や業務用米飯に適する。
  3. いもち病圃場抵抗性が弱いので、適期防除に努める。
  4. 耐倒伏性は「ササニシキ」よりやや強いが“やや弱”なので多肥栽培は避ける。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
寒冷地向け極良食味・耐冷性・いもち病抵抗性品種の育成
予算区分
指定試験
研究期間
2001〜2009年度
研究担当者
永野邦明、千葉文弥、宮野法近、佐々木都彦、遠藤貴司、我妻謙介、早坂浩志