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炊飯米の多面的物性評価による水稲新品種「つや姫」の食味解析

[要約]

「つや姫」の炊飯米は表層の硬さ及び粘りが「コシヒカリ」と異なり、高い弾力性を有するため崩れにくい。炊飯米の表層の硬さはアミロース含量との関係が低いが、各物性値は良好な範囲にあるため、食味官能値が高まる。

[キーワード]

米、炊飯米、つや姫、食味、物性

[担当]

山形農総研セ・作物資源開発部、山形農総研セ・水田農試水稲研究科、食総研穀類利用ユニット

[代表連絡先]

電話023-647-3500

[区分]

東北農業・作物(稲栽培)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

山形県産米の評価向上のために高品質良食味の「つや姫」が育成された。炊飯米の食味特性にはその物性が寄与し、タンパク質含量やアミロース含量といった成分値が物性に大きく関係すると考えられている。そこで、タンパク質含量、アミロース含量の異なる「つや姫」を食味官能試験及び炊飯米の物性測定試験に供試して「つや姫」の食味特性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 「つや姫」の食味官能値(総合)においては、「コシヒカリ」よりも高い値が見られ(表1図1)、炊飯米物性値(硬さ、粘り、付着量、付着性、弾力性)においては、表層の硬さ及び粘りは「コシヒカリ」並から高く、良好な物性である(表2)。表層の硬さ及び表層の粘りにおいて、「つや姫」と「コシヒカリ」の間に有意差があるが、全体の硬さ・粘りに差は認められず、「つや姫」と「コシヒカリ」では炊飯米表層の物性が異なる。
  2. 「つや姫」の表層の硬さはアミロース含量と連動しないで高い値にあり、炊飯米にしっかり感がある(図2)。また、多重圧縮の結果から「つや姫」の炊飯米は弾力性に富み、崩れにくい特性が示される(表2)。「つや姫」は炊飯米の表層の物性が優れ、食感が良い。
  3. 食味官能値、成分値、物性値におけるそれぞれの関係では、「コシヒカリ」においては、食味官能値(総合)とタンパク質含量との間に有意な負の相関関係(r=-0.924**、1%水準で有意、n=6)が認められるとともにアミロース含量と物性値の多くの項目の間で有意な相関関係が認められる(図12)。このことから、成分値が食味の決定要因であると考えられる。「つや姫」においては、食味官能値(総合)とタンパク質含量との間に有意な負の相関関係(r=-0.854*、5%水準で有意、n=6)が認められるが、アミロース含量と各物性値の間には「コシヒカリ」ほど高い関係性は認められない。
  4. 「つや姫」は、炊飯米の表層の物性に特徴を有し、物性が安定して食感が良いため食味官能値が高まると考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本試験に用いたサンプルは、山形県農業総合研究センターにて2009 年5 月1 日から移植時期を10 日ごと変えた作期試験により、「つや姫」と「コシヒカリ」を同条件で栽培して得られたものである。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
水稲新品種「つや姫」の技術的評価と栽培法の確立
予算区分
県単
研究期間
2007〜2010 年度
研究担当者
浅野目謙之、森谷真紀子、鈴木啓太郎(食総研)