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デジタルカメラを用いた瞳孔反射時間測定による牛の血中ビタミンA濃度の推定
[要約]
肥育牛の眼球に懐中電灯で光を照射した後、コンパクトデジタルカメラのビデオ撮影機能を用いて瞳孔反射時間を測定することにより、現場において簡単に血中ビタミンA濃度を推定できる。
[キーワード]
血中ビタミンA濃度、瞳孔反射時間、デジタルカメラ、動画撮影
[担当]
福島農総セ・畜産研究所・沼尻分場
[代表連絡先]
電話0242-64-3321
[区分]
東北農業・畜産
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
肥育牛のビタミンA欠乏による損耗防止のためには、個体毎の血中ビタミンA濃度(以下「VA濃度」)を把握する必要がある。VA濃度を正確に測定する方法としては高速液体クロマトグラフ法(HPLC)が一般的であるが経費と時間を要する。このため、開発されている瞳孔反射(収縮)時間からVA濃度を推定する方法を基に、コンパクトデジタルカメラを用い瞳孔反射時間を測定し、現場で簡単で且つ正確な測定方法を確立する。
[成果の内容・特徴]
- 平成21、22 年生まれの肥育牛(当場24 頭、肥育農家1 戸8 頭)を試験に供した。
- コンパクトデジタルカメラを用いた瞳孔反射時間測定方法
- 牛を頭絡で保定し、小型三脚(脚長10cm 程度)を頭部(頬骨部)にゴムひもで固定した後、コンパクトデジタルカメラを装着し、牛の眼球を撮影する(写真1)。
- 手のひらで牛の眼瞼を塞ぎ10 秒間遮光した後、眼球から約10cm の距離で一般的に用いられている懐中電灯(12,000 ルクス)で光を照射して瞳孔の収縮状況を動画撮影する。
- パソコン上で画像を再生して正確な瞳孔反射時間を測定する。(パソコンがない場合はデジタルカメラの画像からも測定できる。)
- 上記の撮影環境の下で、高VA牛(ビタミンA制限給与開始時の適正域である80IU/dl以上の牛群)、中VA牛(30 〜 80IU/dl 未満の牛群)、低VA牛(欠乏症の危険域である30IU/dl 未満の牛群)の瞳孔反射時間は、それぞれ3.4 ± 1.2 秒、6.5 ± 1.3 秒、9.5 ± 1.9秒であり、有意差(P<0.001)が認められる(表1)。
- 収縮が完全に停止するまでの瞳孔の変化は、高VA牛では速やかな動きで収縮が完了するのに対し、低VA牛では緩慢な動きを見せながら収縮が完了する(図1)。
- VA濃度と瞳孔反射時間の関係は、y= 227.44e-0.242xの近似曲線で示され、R2=0.8139 の高い寄与率が得られた(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 本法は、NOSAI 宮城中央家畜診療センターの松田らが「黒毛和種肥育牛におけるVitamin Aと瞳孔反射の関係」(1999 年度農林水産大臣賞受賞)(家畜診療、47 巻4 号、p239 − 243、2000)の報告に基づいて開発した。
- ビタミンAの制限給与を実施する肉用牛肥育農家等において生産者自らが測定可能であり、ビタミンA欠乏症の早期発見に応用できる。
- 瞳孔反射時間が9秒以上の牛は、ビタミンA欠乏症の危険性がある。
- 低ビタミンAの牛は瞳孔の収縮が緩慢になるため、デジタルカメラ又はパソコン上で注意深い観察が必要である。
- コンパクトデジタルカメラは、動画撮影と10cm 以内の距離から接写できる機能を備えた機種が必要である。
[具体的データ]




(福島県)
[その他]
- 研究課題名
- 瞳孔反射速度測定によるビタミンA欠乏症対策
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2009 〜 2010 年度
- 研究担当者
- 荻野隆明、伊藤等、鈴木庄一、大ア次郎