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積雪寒冷地におけるリンゴ黒星病の発生時期簡易推定法

[要約]

積雪寒冷地において、リンゴ黒星病菌の子のう胞子は消雪日からの日平均気温の積算温度が180日度到達後に初飛散する。また、葉での初発日は葉の濡れ時間が10時間以上あった最初の日からの積算温度が220日度に達した日と推定される。

[キーワード]

リンゴ、黒星病、子のう胞子、積算温度、積雪、簡易推定

[担当]

秋田農技セ果樹試

[代表連絡先]

電話0182-25-4224

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

リンゴ黒星病の防除は子のう胞子による第一次伝染の防止が重要であるが、子のう胞子の飛散の確認は顕微鏡を用いて行っている場合が多く、その情報の活用も限定的である。

そこで、本病の被害葉がほぼ0℃の積雪下で越冬することに着目し、子のう胞子の成熟と飛散は消雪後の気温に大きく影響されると考え、消雪日と日平均気温の積算温度などから積雪寒冷地における子のう胞子の飛散開始日、初感染日及び葉での初発日を簡易に推定する手法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 子のう胞子の飛散は、消雪日からの日平均気温の積算温度が180 日度に到達した後の降雨日に開始する(表1)。
  2. 子のう胞子の飛散開始期にあたる4月中旬〜5月上旬の感染に必要な濡れ時間は10時間以上である。消雪日からの積算温度が180 日度以上で、葉の濡れ時間が10 時間以上の日が初感染日となる。
  3. 本病は、感染後の積算温度が220 日度で発病する(表2)。
  4. 2002 〜 2007 年の6か年の葉における推定初発日と実際の初発確認日の日差は、2006年は6日であるが、それ以外は1 〜3日でほぼ一致する。2006 年は初発確認時の病斑が病徴発現後数日を経過した状態であった(表3)。
  5. 以上のことから、消雪日、葉の濡れ時間と積算温度から葉の初発日をほぼ推定できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本実験は全て秋田県農林水産技術センター果樹試験場鹿角分場で実施し、当場の気象観測データ、発生予察調査データを用いている。
  2. 本法は消雪日の確認、気温などの気象情報や葉の濡れ時間によって推定する。葉の濡れの確認は、目通りの高さの枝を対象として、全体から20 〜 30 花(葉)そうの展開葉、未展開葉の結露の有無を目視によって行う。
  3. 本病に対して治療効果を有するDMI 剤を使用する場合は、推定初感染日直後に散布する。

[具体的データ]

(秋田県農林水産技術センター)

[その他]

研究課題名
リンゴ黒星病の防除体系改善試験
予算区分
県単
研究期間
1997 〜 2007 年
研究担当者
浅利正義
発表論文等
1)浅利(2008)北日本病虫研報、59:99-102
2)浅利(2010)植物防疫、64(2):92-95