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堆肥の化学肥料代替量の減肥におけるキャベツ収量の維持と環境負荷の低減

[要約]

キャベツ栽培において、堆肥を施用し、堆肥の作物に利用可能な窒素・リン酸・カリ量を減肥しても、化学肥料に上乗せして堆肥を一定量施用する慣行栽培と比べて、同等の収量を確保でき、窒素の地下への溶脱も低減できる。

[キーワード]

堆肥、減肥、キャベツ、収量、窒素溶脱

[担当]

秋田県農技セ農試・生産環境部・土壌基盤担当

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・基盤技術(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

現状の堆肥利用では主原料の違いに関わらず、一律に一定量を施用する場合が多い。ここでは、キャベツ栽培において、秋田県内で製造されている堆肥に含まれる作物に利用可能な窒素・リン酸・カリを化学肥料の代替量として減肥することにより収量を確保し、環境負荷を軽減することを目的としている。

[成果の内容・特徴]

  1. 堆肥を2,000kg 10a-1施用した時の化学肥料の減肥量は、2009 年は窒素(N)5kg 10a-1、2010 年は窒素14.4、リン酸(P2O5)15、カリ(K2O)24kg 10a-1、2011 年は窒素14.4、リン酸15、カリ15kg 10a-1である(表1)。
  2. 2009、2010、2011 年の3年間を通して、堆肥+減肥区のキャベツ可販物収量および可販物重は慣行区と同等であり、目標収量4,000kg 10a-1を確保している(図1)。
  3. 地下浸透水の2009 年4 月から2011 年10 月までの累積全窒素量は、堆肥+減肥区が慣行区よりも低く推移している(図2)。
  4. 堆肥を上乗せする慣行栽培よりも、堆肥を施用し、化学肥料を減肥することで窒素の地下への溶脱量は低くなり、収量も慣行並に確保可能である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 堆肥の有効窒素量(反応速度論的方法により求めた栽培期間中に作物が利用可能な堆肥の窒素量),く溶性リン酸量(2%クエン酸溶液に溶けるリン酸量),く溶性カリ量(2%クエン酸溶液に溶けるカリ量)を,窒素・リン酸・カリの化学肥料代替量とする(2010実用化できる試験研究(参考・普及事項)、農業試験場)。
  2. 試験圃場は、秋田農技セ農試内の水田転換畑(褐色低地土)3年目であり、転換後2年間はエダマメを作付している。収穫後は、地上部全てを圃場から持ち出している。
  3. 施用した堆肥は、秋田県内で製造された豚ぷんを主原料とし、木質系の副資材と戻し堆肥を混合しており、成分は、水分28.5%、pH9.0、全窒素2.7%、リン酸7.5%、カリ3.0%、全炭素19.2%である。
  4. 秋田県野菜栽培技術指針では、キャベツ(秋冬どり栽培)の施肥量は、堆肥2,000〜3,000kg 10a-1、窒素23〜27、リン酸15〜17、カリ23〜27kg 10a-1である。
  5. 堆肥から投入されるリン酸・カリ量は堆肥主原料によっては非常に高い場合もあり、連用すると土壌へ蓄積するため、堆肥の種類や施用量は土壌診断によって判断する必要がある。
  6. 2009 年と2011 年の作付跡土壌の可給態窒素は、慣行区が7.7、9.3mg 100g-1、堆肥+減肥区が7.2、7.9mg 100g-1である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
地域内有機質資源を活用した持続的農業生産技術の確立
予算区分
県単
研究期間
2007〜2011 年度
研究担当者
石田頼子・武田悟・金和裕・金田吉弘(秋田県立大学)・中川進平・伊藤正志・渋谷允