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DNAマーカーによるハダニ類のビフェナゼート感受性低下個体群の識別

[要約]

ビフェナゼートに対して感受性を低下させたナミハダニとカンザワハダニの個体群 では、シトクロムb遺伝子内の特定部位に変異をもつ個体が存在する。DNA マーカーで変 異型個体を検出することで抵抗性個体群を識別できる。

[キーワード]

ナミハダニ、カンザワハダニ、薬剤感受性、ビフェナゼート、DNA マーカー

[担当]

宮城農園研・バイオテクノロジー開発部、宮城農園研・園芸環境部

[代表連絡先]

電話022-383-8131

[区分]

東北農業・共通基盤(病害虫)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

ビフェナゼートは、訪花昆虫や天敵への影響が少ないため、多くの作物で殺ダニ剤として使用されているが、ハダニ類において抵抗性の発達が認められるようになってきた。そこで、薬剤検定法よりも迅速にビフェナゼートに対する感受性が低下した個体群を識別できるDNA マーカーを開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 検定はDNA 抽出から検出までおよそ5時間で済む(図1)。ナミハダニのシトクロムb 遺伝子の塩基配列から作成したプライマー(表1)を用いてPCR 反応させると160bpの増幅断片が得られる。
  2. ナミハダニおよびカンザワハダニの野生型個体では制限酵素SmlTの認識部位が存在するため、PCR 反応で得られた160bp の増幅断片をSmlTで処理すると、増幅産物は130bp と30bp に切断される。認識部位に変異が生じると増幅産物が切断されず、160bpの単一バンドのままのため、電気泳動により両者を識別できる(図2)。同一サンプルに野生型個体とこの変異型個体が混在すると、160bp、130bp および30bp からなるバンドパターンとなる(図2)。
  3. 野生型個体のみで構成されている個体群の場合、ビフェナゼートに対する補正死虫率は、成虫、卵ともに高いが、変異型個体が存在する個体群では、成虫、卵のいずれかまたは両方で、薬剤感受性の低下が認められる(表2)。このことから、変異型のバンドが検出された個体群は、ビフェナゼートに対する感受性が低下していると判断できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 薬剤検定法に比べ所要時間が短いため、ナミハダニおよびカンザワハダニにおけるビフェナゼート感受性低下個体群の迅速診断に利用できる。
  2. 感受性低下個体群を検出する場合には、数十頭をまとめて検定するが、個体ごとの遺伝子型解析も可能である。
  3. 作成したCAPS マーカーは、ナミハダニおよびカンザワハダニを対象としている。他の種については検討していない。
  4. 感受性低下が著しいナミハダニ個体群では、シトクロムb 遺伝子内にほかの変異がある場合がある(Leeuwen ら、2008)。このため、感受性低下が著しい個体群で変異型が検出されない場合、シトクロムb 遺伝子の塩基配列を解析する必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
簡易遺伝子鑑定等による病害虫診断法の確立
予算区分
県単
研究期間
2009〜2011 年度
研究担当者
板橋建、瀬尾直美、宮田將秀、丹野美和、宮本武彰