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リモートセンシングを利用して水稲の収穫適期をほ場ごとに広域で予測できる
[要約]
衛星または航空機で出穂後17 日以降に観測した画像を用いて、収穫時期の前に、水稲の収穫適期(成熟期)をほ場ごとかつ広域で予測することができる。
[キーワード]
リモートセンシング、収穫適期、成熟期、稲
[担当]
(地独)青森県産業技術センター農林総合研究所・生産環境部
[代表連絡先]
電話0172-52-4391
[区分]
東北農業・稲(稲栽培)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
高温年における収穫の遅れは、胴割米の発生を大幅に増加させることが知られている。成熟期は地域やほ場での違いが大きいが、現行法による成熟期の予測は、地域全体の平均的な状況の把握に留まる。そこで、現場での適期収穫を支援するため、衛星または航空機で観測した分光画像から、ほ場ごとの成熟期を広域で予測する方法を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 登熟期(出穂後17 〜 37 日)の分光画像において、葉緑素の極大吸収波長である670nm前後の反射率は、稲の成熟期と密接な関係がみられる(図1)。
- 正規分布特性を利用し、670nm 前後の反射率のデータ分布を以下の平均日(A)と標準偏差(B)で規定される正規分布に変換することで、分光画像入手後の収穫前に成熟期を予測する「収穫適期予測マップ」を作成できる(図2、図3)。
- A 平均日
現行法※による成熟期予測日
※対象地域の平均出穂日を起点とした出穂後積算気温による予測
- B 標準偏差
実測値による推定マップ※の成熟期分布の平年値(若しくは前年値)
※調査地点における670nm 前後の反射率と成熟期(実測した成熟期)との一次関係式を画像全域に適用することで作成できる。
- 「収穫適期予測マップ」は、実測値による推定マップの状況とよく対応し(図3)、現行法よりも明らかに誤差が小さい。なお、対象ほ場の出穂日を起点とした積算気温による予測(参考法)と比べた場合でも誤差が小さい傾向がある(表1)。
[普及のための参考情報]
- 適期収穫のための農家における収穫日の決定やJA・生産組合等における地域での収穫計画の立案に活用できる。
- 観測日は天候に左右される。観測成功からマップ作成までは5 日前後を要する。分光画像に雲がみられる場合、雲下となった地域は推定できない。
- 観測時に稲が倒伏しているほ場では、精度が低下する。
- 田区データ(ほ場区画のGIS 地図情報)を用いて、稲作付ほ場を抽出する必要がある。推定式は品種別に作成する必要があるため、同一品種が作付されている地域での実施が効率的である。
- 「収穫適期予測マップ」は、予測日の基準となる平均日を現行法から求めるため、現行法の精度の影響を受ける。また、実測値による推定マップの標準偏差データが得られている必要があるため、作成は2 年目から可能である。
- 分光画像は、各年次とも、青森県津軽地域の「つがるロマン」作付地帯において、約100平方キロメートルを対象に観測したものである。
[成果の活用面・留意点]
(青森県産業技術センター 農林総合研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 胴割米の発生要因の解明と防止技術の確立
- リモートセンシングを活用した水稲の適期刈取システムの開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2007 〜 2012 年度
- 研究担当者
- 境谷栄二(青森県産技センター)、井上吉雄(農業環境技術研究所)
- 発表論文等
- 境谷栄二、井上吉雄(2013)日本リモートセンシング学会誌、33 (3): 185-199