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白米アミロース含有率が安定した低アミロース米新品種「あさゆき」の育成

[要約]

「あさゆき」は、青森県での熟期が“中生の早”の低アミロース米で、飯米の粘りが強く軟らかいため、混米用や加工調理用等に適する。また、「あさゆき」は、青森県の低アミロース米認定品種「ねばりゆき」よりも白米アミロース含有率の変動が小さい。

[キーワード]

イネ、あさゆき、低アミロース米、混米、加工

[担当]

(地独)青森県産業技術センター農林総合研究所・藤坂稲作部

[代表連絡先]

電話 0176-23-2165

[区分]

東北農業・稲(稲品種)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

近年、食の多様化が進む中、低アミロース米は炊飯したときの粘りが強く、冷めても硬くなりにくい特徴があることから、混米用や冷凍押し寿司に利用されるなど、一定の需要がある。青森県では、2008 年に低アミロース米品種「ねばりゆき」が認定品種に採用されたが、白米アミロース含有率の年次変動が大きく、それに伴い、登熟期高温年には、糯米と区別ができないほど玄米が白濁し、逆に登熟期低温年には、玄米の白濁がほとんど見られないなど、白濁の年次変動が大きいことにより生産現場で混乱が生じている。そこで、「ねばりゆき」に替わる白米アミロース含有率の年次変動が小さい低アミロース米品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 「あさゆき」(旧系統名「ふ系 228 号」)は、いもち病抵抗性が強く、白米アミロース含有率の年次変動が小さい低アミロース米品種の育成を目標として、2002 年に「相 624」を母、「相 612」を父として人工交配を行い、その後代から育成された品種である。
  2. 出穂期は「ねばりゆき」より2日程度、成熟期は3日程度早く、育成地では“中生の早”に属する(表1)。
  3. 稈長は「ねばりゆき」並の“やや短稈”で、穂長は「ねばりゆき」よりやや短く、穂数は「ねばりゆき」並で、草型は“偏穂重型”、耐倒伏性は“中”である(表1)。
  4. 障害型耐冷性は“やや強”で「ねばりゆき」並である(表1)。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pii”と推定され、圃場抵抗性遺伝子“Pb1”を保有する。圃場抵抗性は葉いもちが“やや強”、穂いもちが“強”である(表1)。収量性は「ねばりゆき」並である(表1)。
  5. 玄米千粒重は「ねばりゆき」より重い(表1)。白米のアミロース含有率は「ねばりゆき」並であるが、その年次変動は「ねばりゆき」より明らかに小さい(表1図1)。玄米の白濁は薄濁りで、「ねばりゆき」と比べて白濁程度の年次変動が小さい(表1)。玄米品質は「ねばりゆき」並の“上下”である(表1)。
  6. 炊飯米は、粘りが強く、軟らかく、「ねばりゆき」と同様に冷凍押し寿司など、冷めた飯米での利用に適する(表2)。また、「つがるロマン」等の粳米品種と 50%程度混米することで、粳米品種単品より食味を向上させる効果がある(表3)。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象:青森県内及び寒冷地北部の水稲生産者
  2. 普及予定地域・普及予定面積:青森県の津軽中央・西北地帯、津軽半島中部地帯、県南内陸・中央地帯に 80ha
  3. その他:2015 年2月に青森県の第1種認定品種に指定。

[具体的データ]

(地方独立行政法人 青森県産業技術センター農林総合研究所藤坂稲作部)

[その他]

研究課題名
耐冷性といもち病抵抗性を兼ね備えた極良食味及び業務用米品種の開発とその普及(農食事業)
耐冷性やいもち病抵抗性を強化した東北オリジナル業務・加工用多収品種の開発(農食事業)
予算区分
指定試験(2002 〜 2010 年度)、農食事業(2011 〜 2014 年度)
研究期間
2002 〜 2014 年度
研究担当者
森山茂治、清藤文仁、今智穂美、鈴木健司、須藤充、小野泰一、神田伸一郎、斉藤聖子、清野貴将、坂井真、舘山元春、川村陽一
発表論文等
森山ら「あさゆき」品種登録出願 2015 年6月 29 日(第 30289 号)