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11.盛岡(岩手)

自然条件を生かした岩手型農業

 <1985年6月16日観測画像>

岩手県は北東北に位置し,東西122キロメートル,南北189キロメートルで,北海道に次ぐ面積(約1.5万平方キロ)を有している。地形的には,西部は秋田県境沿いに奥羽山脈,東部は太平洋岸までの広大な北上山地が南北に縦走している。その間を北上川が南下し,北上盆地がひらけている。耕地面積は約15万ヘクタール,そのうち水田が10万ヘクタールで,東北6県のなかでは水田化率は低い方である。

気象的には,北緯39〜40度に位置し一般に冷涼であるが,地域による格差も大きく,複雑である。このため,メッシュ気候情報システムを開発し,地域の気象特性に応じたキメ細かな農業指導を行っている。

農業粗生産額は,平成2年度で3,478億円,そのうち約40%が畜産である。次いで,35%の米穀類,20%弱の園芸の順である。近年の園芸の伸びが大きい。

宇宙から盛岡周辺を眺めてみよう。

盛岡は,岩手県のほぼ中北部に位置している。北上川本流に,奥羽山系から流れる雫石川,北上山系から流れる中津川,梁川等が合流する地点に発達した街で,北上盆地の北端にあたる。これより南の北上盆地は,本県水田農業の中心地帯である。この画像では,中央部中心から下部にかけての,青紫部分である。

画像左側中心部に位置するのが,県内最高峰の岩手山で,頂上〜尾根部は火山性の裸地状であるが中腹部は原生林(緑色)となっている。山麓部は,有名な小岩井農場(右下)等大規模草地,野菜等主要畑作地帯となっている。岩手山の右上部,下部の青紫部分は西根・松尾地区および雫石地区の小盆地地域で,比較的規模の大きい水田単作地帯である。

画像右側は,太平洋岸まで約100キロメートル幅の北上山地の一部である。北上山地は,準平原地形であり,標高600〜1,000メートル付近の傾斜が緩やかな一帯に,北上山系開発事業で開発された大規模草地が点在する。画像では縞模様の入った楕円型の場所で,褐色を呈しているのは一番草の刈取後と思われる。縞模様は,侵食防止に設けられている50〜100メートル幅の林帯である。

これからの岩手県農業は次のように展開する。

北上川流域および,周辺沖積水田地帯では,20〜30ヘクタールの大規低コスト稲作経営を進めると共に,5〜10ヘクタール規模の自立型複合経営の育成も合わせて進める。畜産では,大規模造成草地を活用した,土地利用型低コスト畜産経営確立を進める。それと共に,園芸では北上,奥羽山系山麓地を中心に大規模わい性リンゴ団地の育成,冷涼な気象条件を生かした土地利用型野菜産地の定着化を進めるほか,近年ではリンドウ等花き類の生産の拡大も著しい。

遠藤征彦(岩手県立蚕糸試験場)

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