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42.播州(兵庫)

大消費地を控えた多種多様な農業経営

 <1985年6月5日観測画像>

兵庫県は,北は日本海,南は瀬戸内海に面するとともに,島としてはわが国有数の規模を誇る淡路島を擁し,「日本の縮図」である。

県土のほぼ中央部を中国山地が横断するため,地質,地形,気候などの地域の自然条件は大きく異なり,それぞれの地域特性を生かした特色ある農業が営まれている。

北部は冬季の気象条件が厳しく単作地帯,南部は温暖な気候を利用した多毛作地域となっている。さらに京阪神という大消費地を控え,これらの立地条件をいかして多種多様な農業経営が行われ,色々な農産物が生産されている。

総農家戸数153,740戸であるが,兼業農家の占める割合が89.9%で,1戸当たりの耕作面積は約60アールである。

全国の上位を占める農産物としては,タマネギ,レタス,カーネーション,チューリップ,イチジクがあげられる。

さて,画像は加古川流域に広がる県南部地域である。当地域は中国山地の南面から瀬戸内海にいたるほぼ県中央部に位置し,県下耕地面積91.3千ヘクタールの49%を擁する地域である。ここに広がる播州平野は耕地の93%までが水田で,気候も比較的温暖であり土質的にも恵まれ,県全体の51%の米を生産し,まさに兵庫県の穀倉地帯である。なかでも,酒米「山田錦」の生産は秀でている。全国一の清酒の生産量を誇る「灘の酒」の酒米をここ播州地域で支えている。また,この地域は,温暖と大消費地を生かした施設栽培が最も盛んなところでもある。トマト,イチゴ,メロン,その他ホウレンソウやシュンギクなど果菜と軟弱野菜が栽培され,安定した経営が図られている。

一方,果樹の生産も多く,マスカットベリーAを主体とするが,最近では巨峰やビオーネなど大粒良味志向への対応もみられる。その他イチジクの栽培も盛んである。

神戸市から姫路市にいたる瀬戸内沿岸地帯は県人口の約47%を占め,わが国有数の工業と商業の地帯である。東端にみられる神戸港は,輸出入の総取扱量全国第1位で農産物関係をみても全国輸出量の15.4%,輸入量では13.7%の取扱いで,特に野菜類の比率が高い。また,県内で生産される優れた「但馬牛」を素牛とする「神戸ビーフ」は兵庫が世界に誇れる最高級のブランドである。

明石市を中心とする瀬戸内海では,明石ダコは全国的にも有名なほか,ノリ養殖も盛んで全国第1位の生産量である。

今,瀬戸内海の水質を守るべく環境問題が重要な課題となっている。いつまでも安定した生産が続き,より豊かな生活環境を願ってやまない。

藤本 清(兵庫県立中央農業技術センター)

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