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51.讃岐平野(香川)

寡雨に備える讃岐平野の農業

 <1984年5月8日観測画像>

香川県の農業をひと言で表現すると,耕地面積の狭小性と慢性的水不足ということになる。1990年の農家1戸当りの耕地面積は68アール(全国43位)と狭い。農業生産は米を基幹として,野菜,果樹,畜産などを組み合わせた複合経営が営まれ,耕地利用率は119.2%(全国4位)と高い。これは耕地面積の狭小性からみれば矛盾しているが,1戸当りの農業機械保有台数が2.58台と全国2位を占める。しかし,農地の基盤整備は,複雑な水利と散居型の農村集落から,あまり進んでいない。

讃岐平野は典型的な瀬戸内式気候で,晴天日が多く雨量が少ない。高松市の年降水量は1,199ミリで,月降雨量が200ミリをこえる月はない。一方,年間の日照時間は2,235時間でしばしば全国1位となる。このような気象条件のため,水不足に悩まされてきた農民は歴史的に干ばつに対する警戒と対策を迫られてきた。しかし,1975年の香川用水の完成は,多数の溜池と相まって,水不足の不安をほぼ解消させた。

1990年最近の米生産は作付面積が20,200ヘクタール,収穫量85,000トンと低水準に甘んじた。麦作は気象・土壌条件などに恵まれ,1987年には小麦,裸麦,二条大麦を併せて6,150ヘクタールで20,800トンを生産した。このほか園芸作物は農作物別粗生産額が全国第3位のレタス,同5位のタマネギ,同13位のイチゴなどに代表される。一方全国的に有名な温州ミカンは恒常的な供給過剰基調のもと,栽培面積が2,180ヘクタールまで低下している。また花きでは電照ギクが全国第4位,カーネーションが同9位,盆栽が同2位で全国屈指の生産を誇っている。このほか最近の新しい方向として七宝山周辺のタマネギの種子生産や,琴南町の山岳部におけるキャベツ生産等が大規模に進められている。

さて,画像は1984年5月8日の香川県のほぼ全域を描き出している。香川と徳島の県境は吉野川の北10〜20キロメートルのあたりである。西端は観音寺市,東端は津田町付近までがこの画像に含まれている。東西に走る讃岐山脈は常緑樹に覆われているが,山中に見える白い斑点は讃岐山地開発計画による開発地である。

山麓には点々と溜池がみえる。その数は合計16,304個と記されている。画像の中央近くにシカのような形で見える満濃池は,周囲約20キロメートルの日本最大の溜池で,大宝年間(8世紀初頭)に讃岐国守道守朝臣が掘らせたとされている。

香川県は耕地面積のうち75%近くが水田である。しかし画像に水田はまだ現れていない。平野部で薄緑色にみえる部分は収穫前の麦であろう。いずれにしても一筆面積が極めて狭小なことが画像から想像できる。

長年の懸案であった本・四連絡橋3ルートのうち,坂出−児島ルートの瀬戸大橋(総延長48.8キロメートル)が1988年春に開通した。この画像では埋め立て工事や観光開発が進む沙弥島や与島がはっきりと現れている。また坂出市側に大きな工業団地用地が白く浮かび上がって見える。新しい交通体系の実現は四国の地域経済社会全般に大きなインパクトを与えると予想される。今,四国の農業は新しい条件に対応できる農業生産の再編と技術の開発が迫られようとしている。

秋山 侃(農業環境技術研究所)

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