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情報:農業と環境 No.61 (2005.5)
独立行政法人農業環境技術研究所

平成16年度農業環境研究推進会議の詳細

平成16年度の農業環境研究推進会議が、農業環境技術研究所において2月24日に開催された。この会議は、農業環境研究の推進を図ることを目的とし、農林水産省関係行政部局と関係研究機関等からの農業環境研究に関する要望を受けるとともに、意見交換を行うため、農林水産省関係行政部局および関係する独立行政法人、都道府県の研究機関等からの出席のもとに開かれたものである。

本会議

農業環境研究推進会議本会議は、農林水産省の関係行政部局、農林水産技術会議事務局、および農業環境に関係する検査・研究機関からの29名、農業環境技術研究所からの28名の参加のもとに開かれた。

1.あいさつ

農業環境技術研究所 陽 理事長

平成13年度に法人が設立されてから、今回が4回目の推進会議となる。平成13年度においては、「公共性、自主性、透明性」のある法人をめざすことを強調した。平成14年度では、「国際、学際、地際」を強調した。つまり、農業環境研究は現場に役立つものでなければならないということである。また、世の中には3つの「分離の病」、すなわち、「知と知の分離」、「知と行の分離」、「知と情の分離」があり、知と知、知と行をどのように結合させるかを目標とした。平成15年度は、「国際、学際、地際」について3年間を振り返ってどの程度達成できたかを検討した。そして今年度は、理事長としての任期が最後でもあることから、平成13年度に掲げた「公共性、自主性、透明性」についてどの程度達成できたかを振り返ってみたい。

公共性については、「国際、学際、地際」と「受信、研究、討論、貯蔵、評価、発信、提言および宣伝」を目標にしてきた。とくに、研究成果の発信を積極的に行っており、その集大成として近日中に3冊の本を刊行予定である。過去20年間に得られた農業と環境に関わる研究成果をまとめた「農業環境研究20年の歩み」、本研究所に伝わる「お宝」紹介と、農環研ニュースの巻頭言を取りまとめた「散策と思索」、平成12年度から農環研ニュースに掲載された研究トピックスをまとめた「農業環境研究の最前線」である。

自主性については、「研究推進費」の枠を立て、国際研究集会等への積極的な参加、海外留学、所内独自の法人プロジェクトの実施等を行ってきた。また、農林水の環境に関する3つの研究所で「3所連絡会」、それに加えて、環境省、国土交通省等に所属する11所の研究機関で「環境研究機関連絡会」を設立し、情報交換の拡大と連携協力を強化した。

透明性については、ホームページによる幅広い情報の提供、選考採用の公募、予算、収支計画および資金計画に関する情報の公開を行ってきた。

このように、平成13年度の法人設立時に掲げた目標に対して着実に成果を上げてきたものと自負する。4年間の取り組み状況および今年度の研究推進状況について、この後、企画調整部長より概要を説明する(議題2〜7)が、今のような視点で総括をお聞きの上、いろいろなご意見をいただきたい。

農林水産省 農林水産技術会議事務局 大川 研究開発課長

平成17年度の予算が昨年末に概算決定された。政府の財政が厳しい中、試験研究に関する予算は競争的資金が拡充され、トータルで前年度比102.1%となった。各独法の試験研究機関に対しては、運営交付金は前年比で1%減が義務付けられている状況での予算配分となった。

現在、独立行政法人を巡る状況は大きな変化を迎えている。法人設立当初は、最初の5カ年の中期目標の最終年に事務・事業の見直しが行われる予定であったが、独法機関のうち、試験研究機関を含む約半数については、1年前倒しで平成16年度に見直しがなされた。その結果、農水省所管の独法では、農業・生物系特定産業技術研究機構、農業工学研究所、食品総合研究所の3法人の統合、水産総合研究センターとさけ・ます資源管理センターの統合、農業者大学校の廃止、職員の非公務員化などが決定された。

このような独立行政法人を巡る状況の変化や新たな「食料・農業・農村基本計画」の策定を踏まえ、技術会議では平成11年度に策定した農林水産研究基本目標の全面的な見直しを進めている。具体的には、農林水産研究がめざすべき社会的貢献のあり方、今後10年間を見通して重点的に取り組むべき研究開発目標、およびその実現を図るための具体的施策を盛り込んだ、新たな「農林水産研究基本計画」の策定を進めている。各独法は、新たな農林水産研究基本目標に沿った次期中期計画を策定することになるが、農環研においては、今後とも国民の期待に応え、インパクトのある研究成果を上げられるよう、いっそうの業務の推進を期待する。

(注: 新たな「食料・農業・農村基本計画」(http://www.maff.go.jp/j/keikaku/k_aratana/pdf/20050325_honbun.pdf (ページのURLが変更されました。2014年12月) ) は平成17年3月25日に閣議決定された。これをうけ、農林水産技術会議は新たな「農林水産研究基本計画」 (該当するページが見つかりません。2014年12月) を3月31日に決定した。)

2.平成15年度農業環境研究推進会議において行政部局及び研究機関から出された要望等への対応状況

昨年15年度の推進会議で出された要望等と、それに対する当研究所の対応状況を報告した。

3.農林水産省独立行政法人評価委員会による農業環境技術研究所の平成15年度に係わる業務の実績に関するによる評価結果について

「業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置」、法人の主要な業務である研究開発を含む「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置」、「予算(人件費の見積もりを含む。)、収支計画及び資金計画」、および「その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項」に関する評価項目について、すべて中期計画の達成に向けて業務は順調に進捗(しんちょく)していると判断され、Aと評価されたことを報告した。

4.平成16年度評議会報告

法人が独自に行う機関評価として、16年4月に当研究所で開催された「平成16年度独立行政法人農業環境技術研究所評議会」の概要を説明し、評議員からの指摘事項とそれに対する対応を報告した。

5.平成16年度研究推進状況の総括

平成16年度の研究の実施状況について、中期計画小課題、受託プロジェクト研究など法人プロジェクトおよび他の研究機関等との連携研究などを説明した。また、ラオス国立農林水産業研究センターとMOUを締結したことを紹介した。

6.平成16年度に実施した研究会・シンポジウムの概要報告

過去1年間に研究所が開催した研究会・シンポジウム(14件、うち国際会議6件)の概要を報告した。

7.平成17年度のプロジェクト・研究会・シンポジウム等の予定

当研究所が中心となって実施するプロジェクト研究等の来年度の予定および研究所が開催する研究会・シンポジウムの今後1年間の開催予定(9件、うち国際会議2件)を紹介した。

8.行政部局および研究機関からの要望

(1)農水省 大臣官房 環境政策課 林企画係員

先般の京都議定書の発効を受けて、地球温暖化対策大綱から目標達成計画に切り替えて対策を推進していくことが求められている。その中で、バイオマスの利活用の推進や、循環型社会の構築におけるマテリアルフローの把握が進められている。これらに関する農環研の研究成果は、農水省で進めている地球温暖化対策に対し有効であると考えるので、今後とも情報を提供いただきたい。

(2)農水省 消費・安全局 農産安全管理課 新本調査官

Codex委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)においてカドミウムの国際基準の設定が進められており、4月下旬に担当部会(食品添加物・汚染物質部会)がオランダで開催され、基準値について議論される予定である。国際基準の動向を踏まえ、国内基準も検討される予定である。基準値が0.4ppmに設定された場合の吸収抑制対策技術については、技術マニュアルとして成果を出してもらっているが、今後、リスク管理を進めるにあたり、土壌の理化学性から地域ごとのコメのカドミウムによるリスクを予測するための調査を予定しているので協力いただきたい。また、土壌浄化技術についての研究を進めていただいているが、技術の組み立てについても進めていただきたい。

カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)への対応では、遺伝子組換え作物の開発状況を見ながら生物多様性への影響評価手法の確立を進めてほしい。現場レベルでは遺伝子組換え作物に対する懸念が強く、北海道では栽培規制の条例が提出されている。EUでは、生産、流通現場での混乱防止や消費者の懸念を払拭(ふっしょく)するために、一般作物と遺伝子組換え作物との共存のためのシナリオが作成されている。今後は、このような観点からも検討を進めていく必要があると考えているので協力願いたい。

(3)農水省 生産局 農産振興課 環境保全型農業対策室 金澤課長補佐

来年度から新たな食料・農業・農村基本計画に基づいた施策が展開される。このうち、環境と調和のとれた農業規範を策定するにあたり、農環研にも助言いただいた。環境保全がとくに必要な地域については、環境負荷の大幅な低減が必要であり、負荷低減技術の効果に関する評価手法の確立にご協力いただきたい。

また、農耕地土壌における炭素収支のあり方、農耕地由来の環境負荷物質が水質に及ぼす影響評価のあり方についてもアドバイスをいただきたい。

(4)農水省 農村振興局 資源課 富田農村環境保全室長

資源保全施策において、農地、水路の多面的機能を維持するための環境影響評価指針の策定が求められるので、助言をお願いしたい。

平成17年度から外来生物調査を実施し、水質浄化や法(のり)面被覆を目的とした外来植物の利用を検討し、調査結果に基づいて対策指針を整備したい。農環研にはすでに調査に協力いただいているが、今後も調査への参画をお願いしたい。

今国会で湖沼法(湖沼水質保全特別措置法)の改正が審議され、湖沼水質の改善に向けた施策の拡充が必要とされている。今後は面源負荷対策の強化が図られることから、技術的なバックアップをお願いしたい。

2004年11月に開催されたINWEPF(国際水田・水環境ネットワーク)の設立記念シンポジウムに農環研からも出席いただいたが、今後とも協力をお願いしたい。

(5)独立行政法人肥飼料検査所 今井理事

肥料由来のカドミウムについて、含有量をどのレベル以下にすれば収穫される作物への安全性が図られるかを知りたい。また、カドミウムの土壌中での挙動は、かんがい水由来、土壌鉱物由来、肥料由来で異なるのかを教えていただきたい。さらに、稲わらは堆肥に利用されることから、玄米中だけでなく、稲わらにおけるカドミウムの分布についても研究範囲を広げてほしい。

家畜ふん尿の適正処理に関する法律が施行され、現場では堆肥化が進められている。家畜由来の堆肥にもカドミウムが含まれるので、良質な堆肥を適正に循環させるための技術的なサポートをお願いしたい。

(6)独立行政法人農薬検査所 阪本検査部長

マイナー作物に対する農薬登録の促進と特定農薬の評価について、引き続きアドバイスをお願いしたい。

(7)中央農業総合研究センター 高橋病害防除部長

今年度から始まった「生物機能」や「堆肥リサイクル」プロジェクトなどの個々の課題について、連携して進めていきたい。また、農業規範の策定やIPM(総合的有害生物管理)の普及をめざし、これに関連する技術の開発研究を連携して進めていきたい。

(8)野菜茶業研究所 武田茶業研究部長

野菜茶業研究所でも今後カドミウムの問題について取り上げていく予定であるので、協力をお願いしたい。また、地球温暖化対策、生物機能についても連携して進めていきたい。

(9)畜産草地研究所 加納草地生態部長

地球温暖化ガスのシンク(吸収源)となっている永年草地の役割は重要と考えている。永年草地におけるフラックス(ガス交換量)の測定について今後とも協力いただきたい。

また、家畜ふん尿の有効活用の研究や、センチピードグラスの導入が植生に及ぼす影響の研究などを協力して進めたい。

(10)動物衛生研究所 宮崎毒性物質制御研究室長

POPs(残留性有機汚染物質)による飼料や畜産物の汚染状況、さらに、それによる毒性について研究を進めているが、このような観点から農環研との共同研究を進めていきたい。

(11)北海道農業研究センター 山田生産環境部長

気候変動に関連した研究を推進している。農環研にいろいろ協力をお願いしているが、今後も引き続き協力いただきたい。

(12)東北農業研究センター 矢島地域基盤研究部長

宮城県古川農業試験場からの要望で、転換畑における畑作物・野菜のカドミウム吸収抑制対策のための技術開発をお願いしたい。

(13)近畿中国四国農業研究センター 斉藤地域基盤研究部長

琵琶湖や瀬戸内海などの閉鎖性水域を抱え、水質汚濁に敏感な地域が多い。そのため環境保全型農業技術の開発を重点化しているので、このような観点から協力いただきたい。

(14)九州沖縄農業研究センター 金森環境資源研究部長

家畜ふん尿の堆肥化について、ペレット化を進めているので、アドバイスをいただきたい。

(15)農業生物資源研究所 平井研究企画官

引き続き農環研と連携しながら遺伝子組換え作物の実用化をめざしたい。

(16)農業工学研究所 長利農村環境部長

改正土地改良法に基づいて、環境に配慮し生物との共存を図る基盤整備について研究を行っていくことが重要であり、今後とも協力をお願いしたい。また、多面的機能や生物機能についても連携を図りたい。

(17)国際農林水産業研究センター 松本主任研究官

食料変動や環境負荷の研究について連携・協力をお願いしたい。

(18)森林総合研究所 佐藤研究管理官

3所連絡会でも情報交換を行っているが、地球温暖化対策や野生鳥獣関連など多くの研究分野で連携・協力をお願いしたい。

(19)瀬戸内海区水産研究所 有馬化学環境部長

3所連絡会、有害化学物質プロジェクト、地球温暖化のプロジェクトなどで連携を行っており、今後とも協力をお願いしたい。また、水質汚濁については、陸域だけではなく海域も視野に入れて検討いただきたい。

研究推進部会
議題:「本中期計画の研究課題の取りまとめと研究展開の方向」

本会議の出席者のほかに農環研の研究者などが加わり、約70名が出席して開催された。

趣旨

独立行政法人については、中期目標期間の終了の都度、組織及び業務全般の見直しを行うことが制度の中核と位置付けられている。農業環境技術研究所は、17年度に中期目標期間の終了を迎えることになり、16年2月に、平成18年度から開始される次期中期計画期間における法人としての組織見直しについて方向性が示された。

こうした中で、当所では研究業務を見直すため、平成15年9月から平成16年6月までの間に、「次期中期計画策定のための戦略検討会」を5回開催した。この検討会では、各研究分野での検討を基に、本中期計画期間中の研究課題の整理を行いつつ、今後、重点化する、継続するおよび整理・統合すべき研究課題について議論を重ねた。

本部会ではこれらの経過を踏まえ、次期中期計画における研究展開方向を念頭におきながら、最終年度に行う予定であるこれまでの研究課題の取りまとめ方向について検討する。このため、各研究部長・センター長が各分野ごとに概要説明を行うとともに、大学及び民間等外部有識者をコメンテーターに迎えて意見を頂き、討議を経て今後の研究推進方針を明確にする。

議事

1.理事長あいさつ

2.コメンテーター紹介

3.趣旨説明(企画調整部長)

4.課題説明

1) 化学環境部(化学環境部長)

2) 生物環境安全部(生物環境安全部長)

3) 地球環境部(地球環境部長)

4) 環境化学分析センター(環境化学分析センター長)

5) 農業環境インベントリーセンター(農業環境インベントリーセンター長)

5.有識者からのコメント

1) 古在 豊樹(千葉大学 環境健康フィールド科学センター長)

2) 堀  雅文(三菱総合研究所 地球環境研究本部 シニアプロジェクトマネージャー)

3) 松永 和紀(科学ライター、前毎日新聞記者)

4) 永田  徹(農業環境技術研究所評議会委員長、前茨城大学教授)

6.総合討論

検討の概要

議題3について、企画調整部長が趣旨説明を行った。

議題4について、化学環境部長、生物環境安全部長、地球環境部長、環境化学分析センター長および農業環境インベントリーセンター長が、各研究課題の推進状況を説明した。

議題5について、有識者から以下のコメントがあった。

(1)古在 豊樹(千葉大学 環境健康フィールド科学センター長)

大学、自治体、民間等では実施が困難な課題を設定し、優秀なスタッフと高度な施設を駆使してレベルの高い成果を上げていると思う。また、科学的知見に基づいた成果を公正・中立の立場で公表していることも高く評価できる。ただし、農環研の研究成果を大学や一般の人に分かりやすく伝えるために、もう少し工夫が必要と考える。たとえば、有機農法や無農薬栽培と慣行栽培との間で、環境資源や生産性に関するリスクを比較できるようなデータを示すことはできないか。

このような高度な研究体制を維持するため、学位を取得した研究スタッフの選考採用や任期付き任用をさらに推進する必要があるだろう。

農環研として、リスクコミュニケーションについてどの程度まで携わるのか知りたい。また、農環研の研究テーマの比率が、農業生産から、生産環境の安全・安心に移行している中で、地方自治体の試験場との足並みをどのようにそろえていくかが課題だと思う。

(2)堀  雅文(三菱総合研究所 地球環境研究本部 シニアプロジェクトマネージャー)

2年半前に三菱総合研究所で58の独立行政法人に対するアンケートを実施した。その結果によると、独立行政法人の全般的課題として、国民への広報、民間企業・大学との連携を強化し、組織の存在を意義付けることが重要であると考えられていた。また、独法の研究成果に対する評価基準の具体化と「役に立つ」特許取得の推進、さらにプロジェクト管理におけるプロジェクトリーダーの調整能力の強化、経費管理におけるコスト意識の向上、事務処理の効率化なども重視されていた。

温室効果ガス排出抑制に関しては、省エネ法および温暖化対策推進法の改正によって、平成18年度からの算定・公表制度の導入が予定されている。この制度では、年間3,000t-CO2以上を排出する事業者に対し、温室効果ガス(6ガス)の排出量を国へ報告することが義務付けられる。農業関係では、年間3,000t-CO2以上を排出する事業者はなく、対策が立てにくいという理由から対象外とされているが、将来は対象となる可能性が大きい。対象となった場合、実現可能な対策が必要であることから、農環研の研究成果の寄与が期待される。

(3)松永 和紀(科学ライター、前毎日新聞記者)

研究課題の説明を聞いて、将来を見通した重要な研究を行っていると実感した。農環研の研究がマスメディアに取り上げられることが少ないのは、自分自身を含めたマスコミ関係者の目がないことも原因だと考える。

第22回土・水研究会に参加して、バイオマス資源の有効利用の観点からだけでなく、環境への負荷の観点からも検討が行われていることに研究の深さを感じた。他の省庁のバイオマス利用では、たとえば、エネルギー効率の向上ばかりが検討され、排出される窒素の環境負荷への配慮がないことなどがあげられる。このような姿勢に対して、ブレーキをかける役割は非常に大きいと感じた。バイオマス利用については、全体設計が必要であることを農環研から発信してほしい。

知的財産権の取得状況について、正直な感想として、少ないと感じる。特許等を増やすことは、農環研の研究成果が国内の農業現場、さらには海外へ浸透するきっかけになると考える。研究者が特許を取りやすくなるよう、研究所としてバックアップする体制を充実させてほしい。

農業環境資源にかかわるインベントリー研究は非常に重要と考えるが、論文化が難しいなど成果が目に見える形で現れにくく、従来の評価法が適用しにくい分野である。インベントリー研究の推進に加えて、このような研究分野の評価手法の確立を率先して進めてほしい。

広報活動について、ホームページの充実や各種資料の公表に努力されているが、一般の人に分かりやすく伝えるためにはもう一歩の努力が必要と考える。単に研究成果を発信するだけでなく、研究の背景の説明や成果が農業現場にどのように役立つのかなど、ストーリー性のある情報も発信してはどうか。一般の人は「農業」のことをほとんど知らないので、「ストーリーを語る」ことにより、農環研の研究だけでなく「農業」を知るきっかけにもなるのではないか。また、対外的な対応を引き受ける「広報官」を設置し、所としての広報活動を強化することも考えられる。

(4)永田  徹(農業環境技術研究所 評議会委員長、前茨城大学教授)

農業環境研究は農業生態系との結びつきが重要であり、今期中期計画においてそれぞれの課題の位置づけをしっかりと行い、それに沿って着実に成果が上がってきていると感じた。今般、独立行政法人の試験研究機関の見直しが行われたが、このような取り組みが評価され、平成18年度以降も農環研単独で組織を運営していくことになったものと理解している。ただし、次期中期計画では、農環研の存在意義を十分に世に問えるかがカギになるだろう。環境研究において同じキーワードを持つ国立環境研究所と比較される部分が多いと思うが、国立環境研究所と対立するのではなく、「農業」環境研究という独自性をいかに打ち出すかを重視すべきである。

次期中期計画(案)において、リスクの評価と管理を前面に出したことは適切だと思う。これまでの環境問題の多くは、「白黒をつける」ことに終始し、対立関係を生じさせる結果になって議論が平行線のままであった。そこで、農環研はリスクの考え方を取り入れ、中立的な立場で農業環境に関わるさまざまな問題に対応していくことが重要であると考える。

議題6について、指定試験地等から以下の要望があった。

(秋田県農業試験場)

現場ではシビアな判断が求められる場合が多い。農環研の取り組みが現場でつねに受け入れられるわけではなく、ケースバイケースであるので、このような状況を理解していただきたい。

(愛知県農業総合試験場)

愛知では窒素の面源負荷の問題が深刻であるので、問題解決のためのモニタリング手法の開発や評価手法の開発をお願いしたい。また、トマトやキクの異常生育の問題があるので、どのような物質が原因であるのかを解明してほしい。

(静岡県農業試験場)

静岡でも環境への窒素負荷が深刻な問題となっている。窒素の除去技術の開発を行っているので、協力をいただきたい。

(富山県農業技術センター)

さまざまな分野において技術の提供をいただいているが、それらの技術が現場でどのように活用されているかにつねに留意していただきたい。

(鹿児島県農業試験場)

平成18年度以降の研究計画の見直しで取り上げられている課題をみると、鹿児島県とはリンクしにくい状況がある。関東地方のみをフィールドにするのではなく、その範囲を拡大してほしい。

(東北農業研究センター)

開発した対策技術が現場に適用可能かどうかを判断するためのフォローアップをお願いしたい。

評価部会

本会議の出席者など50名が出席して、平成16年度の農業環境研究の主要成果候補について検討した。検討の結果、農業環境技術研究所から提出された候補32課題すべてが、主要成果として採択された。なお、これらの成果は、秋田県農業試験場および愛知県農業総合試験場東三河農業研究所から提出のあった主要成果3課題とともに、「農業環境研究成果情報(第21集)」として、平成17年3月末に公表された。
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/result/result21/result21.html)。

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