農林水産省は、平成17年4月に、「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」平成17年度開始課題を決定した(http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/2005/0419.htm)。この事業は、現場に密着した農林水産分野の試験研究の迅速な推進を図るため、産学官の共同研究グループから、研究の領域や目的ごとに研究プロジェクト提案を公募し、採択された課題を農林水産省の委託事業として実施するものである。
農業環境技術研究所は、研究領域設定型研究の全国領域設定型研究(リスク管理型)の中の3課題について中核機関として、また1課題については共同実施機関として、17年度から新たに取り組むことになった。
農業環境技術研究所が中核機関として実施する課題は以下のとおりである。
課題名: 農薬残留推定モデルによるマイナー作物の効率的残留評価法の確立
中核機関: (独)農業環境技術研究所
総括: 環境化学分析センター長 遠藤正造
担当組織: 環境化学物質分析研究室
共同機関: (社)日本植物防疫協会
研究期間: 3年
研究概要: 農薬の作物残留の軽減に資するため、作物残留に及ぼす要因を抽出し農薬残留推定モデルのフレームを構築するとともに、栽培試験、散布試験等により作物ごとに測定したデータをもとにモデルの検証を行う。さらにこのモデルにより各種作物の農薬残留特性を推定し、農薬残留性による作物の序列化を行い、農薬の作物残留評価法を確立する。
課題名: 農薬混用時の使用者や周辺環境への安全性に係る調査研究
中核機関: (独)農業環境技術研究所
総括: 化学環境部有機化学物質研究グループ長 輿語靖洋
担当組織: 農薬動態評価ユニット
共同機関: 千葉大学園芸学部
(財)残留農薬研究所
全国農業協同組合連合会
研究期間: 3年
研究概要: 農薬を混用した場合の使用者や周辺環境への安全性等にかかわる知見が少ない現状にあるため、果樹、野菜等に広く使用されている農薬の中から、農薬の混用の実施状況、剤型、混用に関するリスクの程度、他の組合せへの汎用性等について調査分析を行い、選定した農薬の組合せについて毒性試験(急性毒性、目刺激性等)等の安全性試験を実施する。
課題名: 農産物中カドミウムの収穫前段階の効率的モニタリング手法の確立
中核機関: (独)農業環境技術研究所
総括: 化学環境部重金属研究グループ長 小野信一
担当組織: 土壌化学ユニット、土壌生化学ユニット
共同機関: 滋賀県農業技術振興センター
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間: 2年
研究概要: 農作物のカドミウムリスク管理についてはより確実な実施が必要であるが、これまで行われてきた土壌データに基づく潜在的な農作物のカドミウムリスク推定手法は、土壌条件等により数値がかなり不安定で、リスク予測がきわめて困難であった。このため、収穫前段階でのカドミウム濃度のモニタリングを可能とし汚染米等の流通防止対策を容易とするような、生育途上における収穫物のカドミウム濃度の予測手法を新たに確立する。
また、次の課題には農業環境技術研究所が共同実施機関として参加する。
課題名: 人への健康影響が懸念される肥料由来の危害要因に関する研究
中核機関: (財)肥料経済研究所
共同機関: (独)農業環境技術研究所
(財)畜産生物科学安全研究所
担当組織(農業環境技術研究所): 放射性同位体分析研究室、重金属動態ユニット
研究期間: 3年
研究概要: 肥料中の有害物質等に起因する人への健康影響を未然に防止するために、その危害要因に応じた迅速かつ的確なリスク管理措置の実施が必要である。このため、国内外の肥料に係るリスク情報を広く収集・分析し、監視すべき危害要因を明らかにするとともに、危害要因となる有害物質等(りん鉱石中の自然放射性物質、たい肥原料中に残留する動物用医薬品等)の肥料への残留、土壌中の動態、植物体への移行等について解明する。