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情報:農業と環境 No.62 (2005.6)
独立行政法人農業環境技術研究所

白戸康人・袴田共之・谷山一郎氏: 日本土壌肥料学会SSPN AWARD(欧文誌論文賞)を受賞

当研究所職員の白戸康人氏(地球環境部 食料生産予測チーム 主任研究官)・谷山一郎氏(企画調整部 研究企画科長)と、元職員の袴田共之氏が、日本土壌肥料学会の欧文誌Soil Science and Plant Nutritionの2004年度論文賞(SSPN AWARD)を受賞した。さる4月4日に開催された日本土壌肥料学会総会で承認された。

この賞は日本土壌肥料学会が刊行する「Soil Science and Plant Nutrition」に発表された論文の中でとくに優れた論文の著者に贈られるもので、9月に島根大学において授賞式が行われる。受賞論文とその概要は次の通りである。

受賞論文

Shirato, Y., Hakamata, T. and Taniyama, I.:
Modified Rothamsted carbon model for Andosols and its validation:
Changing humus decomposition rate constant with pyrophosphate-extractable Al.
Soil Science and Plant Nutrition 50: 149-158 (2004)

(黒ボク土に適用可能な改良ローザムステッド・カーボン・モデルとその検証:ピロリン酸塩可溶Al含量に応じて腐植画分の分解率を変えることによる改良)

要約

本論文は、土壌中の炭素の長期的変動を予測するために英国で開発されたローザムステッド・カーボン・モデル(RothC)を黒ボク土にも適用できるように改良したものである。改良方法は、活性のアルミニウムや鉄の存在が黒ボク土の腐植を安定にしていることに基づいて、モデル中の腐植画分の分解率をピロリン酸塩可溶アルミニウム含量を用いて補正したこと、および、黒ボク土が土壌有機物を含まない新鮮火山灰から生成されることに基づいて、不活性な土壌有機物画分をゼロとしたことである。気象・肥培管理条件の異なる日本全国4か所の黒ボク土畑における長期連用試験地のデータを使ってこの改良モデルを検証したところ、現行のRothCモデルに比べてSOC(土壌有機炭素)量の予測精度が大きく向上した。この改良モデルは黒ボク土におけるSOC動態のモデリングの精度向上に貢献し、日本の黒ボク土における適切な土壌有機物管理や土壌からのCO放出の予測に利用できる。

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