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情報:農業と環境 No.62 (2005.6)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際情報: 「命のための水」国際行動の10年、2005−2015

"Water is essential for life."(「水は命にとって不可欠である」)。アナン国連事務総長は、国連のInternational Decade for Action 'Water for Life', 2005-2015(「命のための水」国際行動の10年、2005−2015)が2005年3月22日に始まるにあたり、この言葉で始まるメッセージを発表した。3月22日は国連が定めた「世界水の日(World Water Day)」である。

アナン事務総長のメッセージは、世界の衛生と農業の分野における水利用の改善の重要性を強調し、「世界の水資源は、われわれの生存と21世紀の持続可能な開発のための命綱(lifeline)である。」と結んでいる。このメッセージは国連本部のWebサイト"Water for Life"(http://www.un.org/waterforlifedecade)で公開されている。また、国連広報センターは、このメッセージの日本語訳(http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/1049/ (ページのURLが変更されました。2015年1月) )を、プレスリリースとして公表している。

この「命のための水」国際行動の10年に関する決議は、2003年12月に国連総会で採択された。決議では、水は、環境の保全と貧困・飢餓の根絶を含む持続可能な開発のために必須であるとし、すでに同意されている水にかかわるさまざまな国際的な目標を達成するため、水についての事業や計画などを推進することとされた。この決議文書(General Assembly Resolution on the Decade(A/RES/58/217))は、上記の国連Webサイトの「Reference Documents(関連文書)」のページ(http://www.un.org/waterforlifedecade/reference.html (該当するページが見つかりません。2015年1月) )に、メッセージのビデオ画像や英語版ブックレットなどとともに置かれている。

FAOは、この国際行動のスタートの前日3月21日、'Water for Life' Decade: Appropriate policies needed to make better use of water(「命のための水」10年:水利用の改善に必要な適切な政策)と題するメッセージを発表した。それによると、農業は水の最大の消費者であり、1kgの小麦を生産するために平均1トンの水が使われている。食料需要は待ったなしであり、2000年から2030年の間の食料需要の増大を満たすために発展途上国の食用作物生産を67%増加させる必要があるが、生産性を高めることによって、その間の農業での水利用の増加を14%に抑えなければならないとしている。耕作地の20%が灌漑(かんがい)されていて、そこでの生産が世界の農業生産の40%を占めていることから、適切な灌漑についての技術的、政策的な対応を重視している。

さらに、水資源の減少と人口の増加によって部門間の水利用の競合が増加しているため、農業はよりきびしい目で見られるようになっており、農業政策の大きな変革が必要であるとしている。また、これまで、水開発による環境への悪影響があまりにも大きかったとし、農業の負のインパクトを減らす新たな方法を見出して、生態系を保全するだけでなく、食料の安定供給、貧困の軽減、経済の発展に農業が貢献できるようにすることが重要であるとしている。このメッセージはFAOのWebサイトhttp://www.fao.org/newsroom/en/news/2005/100274/で英語で公表されている。

農業環境技術研究所では、地球規模での水の需給に関連した研究を推進している。これまでの研究成果として「衛星画像を用いたモンスーンアジアでの主要穀物の栽培期間の推定」(研究成果情報第20集農環研ニュースNo.65)、「農業水利用を考慮した新しい大陸スケールの水循環モデルの開発」(研究成果情報第21集)が、当研究所のWebサイトで公表されている。

(企画調整部 木村 龍介)

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