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情報:農業と環境 No.62 (2005.6)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 169: 「産業科学技術」の哲学、吉川弘之・内藤 耕 著、東京大学出版会(2005)

地球環境の劣化を抑制するため持続可能な開発が求められており、生活向上を目指した多様な産業活動の活性化においても地球環境維持の観点が重要となっている。科学技術の研究において、環境の維持・修復と産業振興との両者を実現させることが不可欠である。研究者が果たすべき役割は大きく、その実現のために必要な基礎知識、研究の目標、戦略、方法が十分なものかどうかが課題である。

本書は、持続可能な開発に必要な科学技術知識を生み出すため、「基礎研究が現実に社会において、また、産業において、有効さを発揮するようになる過程を解明し、それを加速するための基本的な問題を明らかにして、そのために有効な方法を提案する」ことを目的にし、産業技術総合研究所の研究者およびマネージメントによって開催された内部検討会での議論を基礎にまとめられた。組織の理念・方針、研究所が取り組むべき本格研究の内容、戦略、さらに、研究と社会をつなぐ方法論など問題提起されている。

目次

はじめに

序章 研究者を取り巻く状況の変化

人類のジレンマ/社会から科学技術への要請/科学コミュニティからの回答/社会から科学技術への再要請/科学技術研究の方向転換

第1章 研究と社会の循環ループ

1.1 研究の社会的契約

公的研究資金に込められたメッセージ/社会と科学コミュニティとの「契約」の成立

1.2 研究と社会をつなぐ

学会の役割/研究の「製品」という新しい概念/「製品」の多様性/研究者と社会の価値観の相違/「製品」の種類

1.3 進化する循環ループ

循環ループの確立/研究の世界では/二重構造を持った研究の循環ループ/製造業の世界では/研究と産業の循環ループの統合

第2章 二つの研究方法論

2.1 研究と社会の間のギャップ

2.2 研究の夢・悪夢・現実

夢の時代/悪夢の時代/現実の時代

2.3 第1種基礎研究と第2種基礎研究

二つの研究方法論/第1種基礎研究の特徴/第2種基礎研究の特徴/夢・悪夢・現実の時代における研究方法論

2.4 第1種基礎研究と第2種基礎研究が持つ固有の体系

第2種基礎研究を学問体系化する

第3章 技術と社会の相互作用

3.1 研究開発の事例

液晶の研究開発/電荷統合型撮像素子(CCD)の研究開発

3.2 イノベーションのフラクタル的構造

研究と社会の相互作用/現実の時代

3.3 技術と社会の関係

新技術の社会受容/技術選択動機の変遷/社会受容できる技術モデルの構築へ向けて

第4章 新しいディシプリンをつくる

4.1 研究の流れ

研究の思考過程/価値から実体へ流れる研究/「出口」というもの/機能と属性の関係/例えば目玉焼きをつくる

4.2 基礎知識に関する問題

研究のおける仮説形成/研究における間違い/知らない基礎知識

4.3 ディシプリンとは

コレクションと概念/概念からディシプリンへ

4.4 ディシプリンの相互関係

ニュートンの試み/ディシプリンの関係からモノづくりへ

4.5 新しいディシプリンをつくる

臨時領域からディシプリンへ/ディシプリンの合成へ

4.6 技術と科学の歴史的関係

ギリシャ時代における技術と科学/中世における技術と科学/20世紀における技術と科学/21世紀における技術と科学

4.7 第2種基礎研究へ

第5章 本格研究:新しい研究方法論の確立へ向けて

循環ループを確立することの重要性/価値から実体へ流れる研究は難しい/異分野知識融合への取り組み/アーキテクトの役割/研究を体系的に経営するための方法論の確立:「本格研究」

おわりに ― 今後の取り組みへ向けて

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