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情報:農業と環境 No.62 (2005.6)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 168: 「世界の食料不安の現状2004年報告:世界の飢餓人口半減に向かって」 国際連合食糧農業機関(FAO)編集、(社)国際食糧農業協会(FAO協会)翻訳・発行(2005)

FAOは、1日当たりの食料消費が1日当たり最低必要量に達しない人口を栄養不足人口として報告している。栄養不足人口は、世界で2000年−2002年に8億5,200万人いると推定されている。このうち、8億1,500万人が開発途上国に、2,800万人が市場経済移行国に、900万人が先進工業国に分布している。また、開発途上国では毎年2,000万人以上の低出生体重児が生まれ、栄養不足や必須アミノ酸とミネラルの欠乏は毎年500万人以上の子供たちの命を奪っている。

これは、本書が報告する世界における飢餓の現状の一端である。本書は、その副題から分かるように、世界食料サミット(WFS)が掲げる目標「2015年までに世界の慢性的飢餓人口を半減する」の進捗状況と問題点を報告している。

「世界における栄養不足」では、栄養不足人口の最新の推計と、飢餓と栄養失調がもたらす著しい人的損失および経済的損失などについて論述している。「際立った特徴」では、開発途上国で進んでいる人口の都市集中と所得の向上がもたらすフードシステムの変化、その変化の小規模農家に及ぼす影響などに焦点を当てて論述している。「サミット公約に向かって」では、目標を達成するための2つのアプローチ(トラック)、すなわち生産性と収入の増強のためのトラック1および食料への直接アクセスを実現するトラック2について述べるとともに、飢餓と闘う行動を例示している。また、開発途上国と市場経済移行国の栄養不足の広がりについて詳細なデータを付表に掲げている。

翻訳に改善の余地はあるが、地球上から飢餓を撲滅するために「我々は、もっと努力しなければならない」「我々は、更なる努力をしないでいるわけにはいかない」「飢餓は、待ったなしである」現状を知り考える行動する上で、一読することを広く薦めたい。

目次

はじめに

世界食料サミットの目標に向かって:飢餓ゆえの障害損失との対決

世界における栄養不足

飢餓人口:最新の推計

飢餓による人的損失:死亡や機能不全によって失われる何百万人もの生命

飢餓による経済的損失:何十億ドルという生産、収入および消費の喪失

飢餓の計測:より効果的な行動のための推計の改善

飢餓頻発地域

際立った特徴

開発途上諸国におけるグローバリゼーション、都市化および変化するフードシステム(食体系)

フードシステム(食体系)の変化が開発途上諸国の小規模農家に及ぼす影響

変容する飢餓と栄養失調

サミット公約に向かって

飢餓と闘う行動

長引く危機に対応する食料システムと地域社会の復元力の要因

農村住民の教育と食料確保

米と食料安全保障

今後の道筋:飢餓を縮減するための行動の強化

付表

出典

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