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情報:農業と環境 No.62 (2005.6)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 167: 「エネルギー」を語る:33の視点・論点、 新井光雄 編、(株)エネルギーフォーラム(2005)

エネルギー問題は無資源国である日本にとって、永遠の問題である。本書は、この問題に少しでも関心を持ってもらおうという意図のもとに企画されたテレビ・インタビュー番組「パワートーク21」の書籍版である。エネルギー問題の専門家、あるいはエネルギー問題に関心の深い作家など33人の識者とのインタビューにより構成されている。目次を一べつして分かるように、多岐にわたるテーマが論じられ、エネルギー問題の全体像がほぼ浮かび上がっている。

編者は、新聞記者として30年余エネルギー問題に関与してきた経歴をもつジャーナリストである。日本にとってエネルギー問題は、安全性が問題になっている食糧問題と並んで、きわめて重要な課題であると確信するに至ったと言う。自由化問題、環境問題、安定供給問題は今日のエネルギー問題を考える基盤であるが、こうした視点からインタビュアーとしてエネルギー問題に切り込んでいる。

それぞれのテーマが一つずつ簡潔に論じられまとめられているので、わずかな時間のときにでも、どこからでも読み進めることができる。石油は日本にとって5割を占めるもっとも重要なエネルギーであること、原油の確認埋蔵量の3分の2が中東に集中して存在していることが石油問題の本質であること、エネルギーが政治性の強い商品であること、地球温暖化には、環境問題として取り組むべきことと地政学的な覇権争いという二面性があることなど、見落としがちな視点に出会うことができる。

目次

はじめに

第1回 エネルギー問題をどう考えるか

第2回 プルサーマルを考える

第3回 暮らしとエネルギー

第4回 電力自由化と発送電分離

第5回 ピーク時消費電力を考える

第6回 石油問題の現在

第7回 石炭の可能性

第8回 天然ガスの課題

第9回 原子力の維持基準問題

第10回 女性作家が語るエネルギー問題

第11回 欧州エネルギー事情

第12回 電力自由化と原子力問題

第13回 節電と省エネルギー

第14回 新エネルギーを考える

第15回 石油開発の展開を見つめる

第16回 LPガスの可能性を探る

第17回 水力電力の魅力に迫る

第18回 石油危機30年を振り返る(1)

第19回 石油危機30年を振り返る(2)

第20回 石油危機30年を振り返る(3)

第21回 石油危機30年を振り返る(4)

第22回 エネルギーと生活

第23回 送電線を守れ!

第24回 家庭の中の電化

第25回 地球温暖化問題 産業界の視点

第26回 中国のエネルギー問題

第27回 原子力と日本社会

第28回 GLT、DMEって何?

第29回 シベリア原油とパイプライン

第30回 原子力問題の側面

第31回 原子力問題の側面 II

第32回 世界の原子力発電事情

第33回 石油価格高騰の背景

第34回 エネルギー教育

第35回 エネルギーの国際事情

第36回 エネルギーの国際事情 II

終わりに

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