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情報:農業と環境 No.66 (2005.10)
独立行政法人農業環境技術研究所

農林水産技術会議事務局「研究成果」シリーズの紹介(9): 434.農用地土壌から農作物へのカドミウム吸収抑制技術等の開発に関する研究

コーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)における食品中カドミウムの基準値設定の動向が世界的に注目され、わが国でもコメをはじめ、いくつかの農産物でカドミウム含量が基準値を超過することが懸念された。そこで、水稲についてはカドミウム吸収を低減するための水管理と土壌改良資材の効果について実証を、ダイズについては子実カドミウム含量の低い品種・系統の選抜を、また小麦や野菜についてはカドミウム吸収の実態把握を行うことが求められた。さらに肥料・資材中のカドミウム含量と形態、およびリン酸蓄積土壌におけるカドミウム蓄積実態の把握が求められた。

研究期間・予算区分

平成12年度〜平成14年度
農林水産技術会議 行政対応特別研究

研究場所

(独)農業環境技術研究所、(独)農業・生物系特定産業技術研究機構、秋田県農業試験場、新潟県農業総合研究所、兵庫県立農林水産技術総合センター、福岡県農業総合試験場、熊本県農業研究センター

主任研究者

(12年度)

主査:
農業環境技術研究所 所長

副主査:
農業環境技術研究所 環境資源部長

推進リーダー:
農業環境技術研究所 資材動態部 肥料動態科長

サブリーダー(測定法):
農業環境技術研究所 環境資源部 土壌化学研究室長

サブリーダー(作物品種):
農業環境技術研究所 環境資源部 土壌生化学研究室長

サブリーダー(肥料資材):
農業環境技術研究所 資材動態部 多量要素動態研究室長

サブリーダー(土壌改良資材):
北陸農業試験場 水田利用部 土壌管理研究室長

サブリーダー(客土等土壌改良〉:
北陸農業試験場 水田利用部 水田整備研究室長

(13、14年度)

主任主査:
(独)農業環境技術研究所 化学環境部長

推進リーダー:
(独)農業環境技術研究所 化学環境部.重金属研究グループ長

サブリーダー(測定法):
(独)農業環境技術研究所 化学環境部 土壌化学ユニット研究リーダー

サブリーダー(作物品種):
(独)農業環境技術研究所 化学環境部 土壌生化学ユニット研究リーダー

サブリーダー(肥料資材):
(独)農業環境技術研究所 化学環境部 養分動態ユニット研究リーダー

サブリーダー(土壌改良資材〉:
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北陸農業研究センター 北陸水田利用部 土壌管理研究室長

サブリーダー(客土等土壌改良):
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北陸農業研究センター 北陸水田利用部 水田整備研究室長

目次

第1章 カドミウムの吸収抑制に関する対策技術の開発

1 土壌改良によるカドミウム吸収抑制効果判定技術の開発

2 カドミウム吸収能の低い作物品種の選定

3 土壌改良資材等の利用による耕種的なカドミウム吸収抑制技術の開発

4 野菜のカドミウム吸収の実態把握と吸収抑制技術の開発

第2章 カドミウム吸収抑制に効果的な土壌改良手法の確立

1 客土等実施地区における土壌改良手法の検証

(1) 秋田県における手法の検証

(2) 兵庫県における手法の検証

(3) 福岡県における手法の検証

(4) 熊本県における手法の検証

2 カドミウム対策土壌の転換畑化によるリスク評価

3 カドミウム吸収抑制に効果的な客土・床締め手法の確立

4 土壌改良のための資材施用法等土壌管理指針の策定

第3章 カドミウムの吸収抑制対策技術のほ場レベルでの実証

1 多湿黒ボク土水田における水稲のカドミウム吸収抑制技術の開発

2 灰色低地土水田における水稲のカドミウム吸収抑制技術の開発

3 露地畑における野菜のカドミウム吸収抑制技術の開発

4 転換畑における作物(小麦)のカドミウム吸収抑制技術の開発

5 転換畑における作物(大豆)のカドミウム吸収抑制技術の開発

主要な成果

(1) 水稲のポット試験では、出穂期以後に落水すると、出穂後2週間目に土壌溶液中カドミウム濃度が湛水区の約100倍に上昇し、その後は高い濃度を維持した。出穂期以後の湛水期間と玄米中カドミウム濃度の間に逆相関が認められ、落水により玄米中カドミウム濃度が上昇し、湛水期間が長くなるほど玄米中カドミウム濃度が低下することが明らかとなった。また、現地の水田でも、水稲のカドミウム吸収抑制にもっとも効果が高いのは出穂期前後3週間の湛水管理であることが実証された。

(2) 熔リンや多孔質ケイカルなどの施用で土壌pHを6.5〜7とし、湛水管理と併用することによって玄米カドミウム含量を低減することができた。しかし、土壌改良資材の施用は土壌条件などにより、効果が一定しない場合もあった。

(3) ダイズのカドミウム吸収には品種間の差異が認められた。ダイズ子実のカドミウム濃度は、環境要因よりも遺伝的要因によって制御されており、子実カドミウム濃度が低いダイズ品種は、根にカドミウムを蓄積して地上部への移行を抑制することが明らかとなった。

(4) 葉菜類においては、ホウレンソウの可食部カドミウム濃度が他の作物と比べて高くなる傾向が認められた。

(5) カドミウム吸収について小麦品種を比較すると、吸収が低い品種があることが知られた。

(6) リン酸質肥料の中では、過リン酸石灰および重過リン酸石灰の全カドミウム含量がやや高く、熔リンでは低かった。高度化成肥料、普通化成肥料もリン酸を含むため全カドミウム含量がやや高かった。植物由来の有機質肥料の全カドミウム含量は低く、水産物由来の有機質肥料は全カドミウム含量が高かった。

(7) 客土の持続効果について各地で調査を行い、30〜40cmの客土で25年後、20cm客土で25年後、25cm客土で6年後に十分な持続効果が認められるなどの調査結果が得られた。

その後の研究状況

この研究プロジェクトの終了時に残された問題点などについては、イニシアティブ研究「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」や、高度化事業研究「農用地土壌のカドミウムによる農作物汚染リスク予測技術の開発に関する研究(農林水産省のページへ (ページのURLが変更されています。2014年12月) )」の中で研究が継続されている。

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