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情報:農業と環境 No.71 (2006.3)
独立行政法人農業環境技術研究所

平成18年度に農業環境技術研究所が開催する研究会とシンポジウム

平成18年度に当所が開催する研究会やシンポジウムの予定をお知らせします。なお、ここでお知らせするテーマや開催趣旨は仮のものであり、今後、変更されることがあります。

データベース構築のための国際ワークショップ
「侵入生物に対するアジア・太平洋外来生物データベースの構築」

開催予定日: 平成18年9月18〜22日

開催予定場所: 台湾

開催趣旨

世界的な物流と人的交流の拡大とともに、アジア・太平洋地域においても侵略的外来生物(IAS: Invasive Alien Species)による経済的、生態的な被害が著しく増大している。各国に共通するこの問題を解決するために、国際連携と協力を通じて、IASに関する研究成果やモニタリング情報をインターネットにより共有することは重要で緊急の課題となっている。

農業環境技術研究所は、2003年と2004年に、「アジア・太平洋外来生物データベース(APASD)の開発とその改善のための国際セミナー」をFFTCなどと協力して開催し、参加各国のIASについての認識と情報の共有化に向けて、本データベースの構築とそのネットワークの形成を図ってきた。2006年に開催を計画している本ワークショップでは、前2回の国際セミナーの活動に引き続いて、参加各国の外来生物情報の充実とシステム改善のために、APASD (システム更新作業のためサービス休止中 [2013年2月20日]) の操作の習得を通じて、データベース構築に必要な人的ネットワークの形成を図ることを目的とする。

第6回有機化学物質研究会
「農薬の大気中への飛散・揮散問題とその対策」

開催予定日: 平成18年9月中旬

開催予定場所: 農業環境技術研究所(茨城県つくば市)

開催趣旨

われわれを取り巻く大気環境にはさまざまな有機化学物質が飛散・揮散し、漂流しており、それら化学物質によるシックハウス症候群を含む化学物質過敏症が近年大きな問題となっている。農業場面では、散布した農薬はドリフト(漂流飛散)するとともに、その後土壌から徐々に揮散し、それらによる作業者や作物、さらには周辺住民や環境への影響が懸念されている。

この問題に対応するため、平成15年に建築基準法や農薬取締法が改正された。さらに、農薬取締法に関連して農薬の作物残留に関するポジティブリスト制度(海外を含む農薬とわが国の作物のほぼすべての組合せに残留基準を設定)が本年5月29日から施行される。また国際的には残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約が平成16年5月に発効し、現在は新規POPsの追加も検討されている。農業環境技術研究所では、平成16年9月の第21回農薬環境動態研究会において「農薬散布時におけるドリフトの環境リスク管理」をテーマとして取り上げたが、この時は、わが国における農薬に限定した技術的課題や限定された対策を整理・紹介するにとどまった。

本研究会では、国内外における大気中化学物質のリスク管理や農薬のドリフトに関する各種の取組みを通して、それらの問題点と対策について改めて整理し、大気中農薬のリスク管理に関する今後の研究の方向性を探る。

第23回農薬環境動態研究会
「マイナー作物における農薬残留問題と今後の課題」

開催予定日: 平成18年9月中旬

開催予定場所: 農業環境技術研究所(茨城県つくば市)

開催趣旨

作物や食品への農薬の残留問題に対する国民の関心はきわめて高く、無登録農薬の使用や基準をこえた農薬の残留が都道府県レベルの風評被害にまで発展することも珍しくない。また農薬の作物残留に関するポジティブリスト制度(海外を含む農薬とわが国の作物との組合せのほぼすべてに対して残留基準を設定)の導入(平成18年5月29日)は、異なる作物が近接して栽培されるわが国の農業現場ではドリフト(漂流飛散)の危険性が高いために、大きな波紋を投げかけている。一方、OECDでは後作物の農薬残留に対して新たなガイドラインの制定を検討しており、とくにマイナー作物の中で大きな割合を占める野菜類における残留問題が懸念される。

ポジティブリスト制度の導入に向けて、残留農薬基準値の設定が食品安全委員会で急ピッチで進められており、また、とくにマイナー作物を対象とする残留試験が都道府県を中心に実施されている。農業環境技術研究所では、平成15年9月の第20回農薬環境動態研究会において「地域特産作物における残留農薬の評価」、また平成17年9月の第22回研究会において「農薬の多成分一斉分析 −需要動向と手法開発−」をテーマとして取り上げているものの、残留分析法の紹介にとどまった。

本研究会では、前日に開催予定の第6回有機化学物質研究会と連携し、ポジティブリスト制度導入以後のマイナー作物を中心とした農薬残留の管理実態を把握するとともに、関連する研究成果を紹介する。また、ドリフトに加え、後作物における残留問題も含めてマイナー作物の農薬登録に関する問題点を新たに整理し、今後の取組みを議論する。

NIAES国際シンポジウム・第26回農業環境シンポジウム
「モンスーンアジアにおける持続的農業のための農業資源の評価と有効利用」

開催予定日: 平成18年11月29日〜12月1日

開催予定場所: つくば国際会議場(茨城県つくば市)

開催趣旨

人間生存の基盤は、質的・量的に安定した食料生産とそれを担う健全な農業生態系にある。とくに、モンスーンアジア各国は水田という共通の食料生産基盤とそれを取り巻く生物多様性の豊かな農業生態系に恵まれている。しかし、近年、地球温暖化、都市化、有害化学物質汚染や外来生物により、農業生態系の崩壊が危惧(ぐ)されている。このため、環境変動が農業生態系を構成する農業資源へ及ぼす影響の評価および農業資源の有効利用による安全な食料の持続的な生産が求められている。そこで、各国の研究者が一堂に会し、これらの課題について情報交換を行うことによって、研究の深化と政策への反映および国際的な枠組みへの貢献を図る。

第24回土・水研究会
「物質循環の基盤としての土壌」

開催予定日: 平成19年2月中旬

開催予定場所: つくば農林ホール(茨城県つくば市)

開催趣旨

土壌は農業生産の基盤であると同時に、陸上生態系の物質循環を担う場として、地域・地球レベルでの物質循環に大きな影響を及ぼしている。土壌における物質循環を健全に保つことは、持続的な農業生産システムを維持するために必須であり、これまでに多くの研究が進められてきた。また、地球温暖化などの地球環境問題の顕在化とともに、温室効果ガスなどの発生や消失の場である土壌に注目が集まっており、土壌を場とした物質循環に関わる研究が急増している。

そこで、本研究会では、物質循環の基盤としての土壌に着目し、物質循環研究の最新の研究成果を紹介するとともに、今後の研究の方向について論議する。

第23回気象環境研究会
「大気環境変化と植物の応答」

開催予定日: 平成19年2月下旬〜3月上旬

開催予定場所: 農業環境技術研究所(茨城県つくば市)

開催趣旨

近年、化石燃料の大量消費などの人間活動に伴って、大気環境は変化しつつある。1970年代から1980年代にかけて問題を投げかけた光化学オキシダントと酸性雨、1990年代からの地球環境問題として、オゾン層破壊に伴って増加した紫外線(UV−B)増加、CO2濃度上昇とそれに伴う温暖化、このような大気環境の変化に対して、植物は可視被害や成長阻害、あるいは成長促進などさまざまな応答を示してきた。

かつて社会の大きな関心を呼んだいくつかの問題(たとえば、光化学オキシダントによる植物の広域被害やスギ枯損)は今どうなっているのか。また、現在、今後もっとも憂慮されている温暖化に対しては、植物や生態系はどのように応答するのか。本研究会では、過去から現在に至る大気環境変化と植物の応答にかかわる問題を整理して未解明のポイントを浮かびあがらせ、今後取り組むべき課題を論議する。

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