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情報:農業と環境 No.73 (2006.5)
独立行政法人農業環境技術研究所

第三次環境基本計画の決定

第三次環境基本計画(「環境基本計画−環境から拓く新たなゆたかさへの道−」)が平成18年4月7日に閣議決定され、「環境の世紀」である21世紀をより良いものとするための理念、道筋、さらに今後の総合的かつ長期的な施策大綱が示されました。

環境基本計画は環境基本法に基づくもので、これまで第一次が平成6年、第二次が平成12年に策定され、行政における環境保全の施策や社会経済活動の基本的指針として大きな役割を果たしてきました。第三次環境基本計画は、地球温暖化など地球環境全体の持続性にかかわる緊急問題に取り組むため、第二次で提示された環境問題と社会経済活動との「統合的アプローチ」に関する基本的な考え方を深化させ、環境施策をさらに強力に推進することを目的に改定されました。国の取組みが民間団体、事業者などすべての国民によって着実に実行されることが重要で、「恵み豊かな環境の中で幸福に暮らせる持続可能な社会を実現していくことが現世代の務め」と述べられています。基本計画は三部で構成され、2025年ころまでに実現すべき社会を念頭に、環境政策の方向性と取組みの枠組みを示しています。

「第一部 環境の現状と環境政策の展開の方向」では、国内外で地球温暖化、水資源、生物資源などの悪化、アスベストによる健康被害や外来生物による生態系への影響など、環境の改善は十分でないという現状が示されています。この実態は、環境基本法の理念である「循環」「共生」「参加」「国際的取組」の実現をめざす長期的な目標と乖離(かいり)しています。環境問題はさらに複雑化・深刻化する方向にあり、問題を解決するために、今四半世紀の環境政策として、環境投資、環境教育・環境学習、情報提供、科学技術の振興など、適切な政策手段の活用を図り、社会経済に環境への配慮が必要であると述べられています。

「第二部 今四半世紀における環境政策の具体的な展開」では、今後の優先的施策として、10の重点分野について、現状と課題、中長期的な目標、施策の基本的方向、重点的に取り組むべき事項、取組みの推進に向けた指標が整理されています。重点分野とは、(1) 地球温暖化問題、(2) 物質循環の確保と循環型社会の構築、(3) 都市における良好な大気環境の確保、(4) 環境保全上健全な水循環の確保、(5) 化学物質の環境リスクの低減、(6) 生物多様性の保全、さらに横断的に関わる事象横断的な分野として、(7) 市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり、(8) 環境保全の人づくり・地域づくりの推進、(9) 長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の基盤の整備、(10) 国際的枠組みやルールの形成等の国際的取組の推進 です。中長期的な目標では、気候変動にかかわる研究・監視観測や国際的連携の確保、水生生物を含めた水環境を総合的に評価する手法の開発、化学物質による水域・陸域生態系への影響解明やリスク評価・管理手法の開発、生物多様性保全に向けた自然環境データの充実など、今後推進すべき研究課題が明示されています。

「第三部 計画の効果的実施」では、環境基本計画を効果的に実施するために、国、地方公共団体、事業者、民間団体の相互の協調と連携が強化されること、環境基本計画と他の計画との調和が保たれること、各種事業を総合的に推進するための財政措置に努力することが必要であると述べられています。さらに、環境基本計画に基づく施策の進捗状況を分析・評価し、環境改善の効果を点検して計画を見直すことも重要としています。

なお、「第三次環境基本計画」の本文は、環境省のWebサイトで公表されています。

「政府の環境政策の基本方針が変わりました!−環境から拓く新たなゆたかさへの道」
( http://www.env.go.jp/policy/kihon_keikaku/plan/plan_3.html )

(ページのURLが変更されています。2015年4月)

目次

前文

第一部 環境の現状と環境政策の展開の方向

序章 目指すべき持続可能な社会の姿

第1章 環境の現状と環境政策の課題

第1節 社会経済と環境の現状

1 我が国の社会経済と環境問題の現状

2 世界の問題と密接に関わる日本の環境問題

3 複雑化・深刻化する環境問題

4 国土と環境問題の現状

第2節 第二次環境基本計画策定後の取組による主な成果と今後の環境政策の課題

1 地球温暖化対策の分野

2 廃棄物・リサイクル対策の分野

3 大気環境対策の分野

4 水・土壌・地盤環境対策の分野

5 化学物質対策の分野

6 自然環境の保全の分野

7 環境教育・環境学習等・環境配慮の織り込みの分野

8 科学技術の分野

9 国際的な取組の分野

第2章 今後の環境政策の展開の方向

第1節 環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上

1 環境効率性の向上、環境と経済の好循環の実現による「より良い環境のための経済」と「より良い経済のための環境」の実現

2 地域コミュニティ再生を通じた「より良い環境のための社会」と「より良い社会のための環境」の実現

3 100年後の世代にも伝えられるライフスタイルへの転換に向けて

第2節 環境保全上の観点からの持続可能な国土・自然の形成

1 自然環境の多様性の維持と質の回復・向上による、ストックとしての国土の価値の増大

2 既存ストックの活用や農林水産業の機能にも着目した、環境保全上の観点から考えられる持続可能な国土づくりの推進

第3節 技術開発・研究の充実と不確実性を踏まえた取組

1 科学的知見、科学技術の充実

2 施策決定における最大限の科学的知見の追求

3 予防的な取組方法の考え方などによる、不確実性を踏まえた施策決定と柔軟な施策変更

第4節 国、地方公共団体、国民の新たな役割と参画・協働の推進

1 国、地方公共団体、国民の役割を踏まえた連携の強化

2 施策プロセスへの広範な主体による参画の促進

3 行政と国民とのコミュニケーションの質量両面からの向上

第5節 国際的な戦略を持った取組の強化

1 国際的枠組みでの持続可能な開発を目指した戦略的な取組の強化

2 国際的なルールづくりへの積極的な参画

3 国際社会の状況を意識した我が国における持続可能な社会づくり

第6節 長期的な視野からの政策形成

1 50年といった長期的な視野を持った取組の推進と超長期ビジョンの策定

2 長期的な取組のための知見の充実

第二部 今四半世紀における環境政策の具体的な展開

第1章 重点分野ごとの環境政策の展開

(事象面で分けた重点分野施策プログラム)

第1節 地球温暖化問題に対する取組

第2節 地質循環の確保と循環型社会の構築のための取組

第3節 都市における良好な大気環境の確保に関する取組

第4節 環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組

第5節 化学物質の環境リスクの低減に向けた取組

第6節 生物多様性の保全のための取組

(事象横断的な重点分野政策プログラム)

第7節 市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり

第8節 環境保全の人づくり・地域づくりの推進

第9節 長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の基盤の整備

第10節 国際的枠組みやルールの形成等の国際的取組の推進

第2章 環境保全施策の体系

第1節 環境問題の各分野に係る施策

1 地球環境の保全

2 大気環境の保全(地球規模の大気環境を除く。)

3 水環境、土壌環境、地盤環境の保全

4 廃棄物・リサイクル対策などの物質循環に係る施策

5 化学物質の環境リスクの評価・管理に係る施策

6 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進

第2節 各種施策の基盤となる施策

1 環境影響評価等

2 調査研究、監視・観測等の充実、適正な技術の振興等

3 環境情報の整備と提供

4 地域における環境保全の推進

5 環境保健対策、公害紛争処理、環境犯罪対策

6 技術開発などに際しての環境配慮及び新たな課題への対応

7 各主体の自主的積極的取組に対する支援施策

8 環境教育・環境学習等の推進

第3節 国際的施策に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力の推進

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

3 多様な主体による活動の推進

第三部 計画の効果的実施

第1節 政府をはじめとする各主体による環境配慮と連携の強化

第2節 財政措置等

第3節 各種計画との連携

第4節 指標等による計画の進捗状況の点検及び計画の見直し

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