前の記事 目次 研究所 次の記事 (since 2000.05.01)
情報:農業と環境 No.73 (2006.5)
独立行政法人農業環境技術研究所

第3期科学技術基本計画の決定

「科学技術創造立国」を国家戦略としたわが国では、平成8年度から科学技術基本計画に基づき科学技術に関する総合施策として、研究資金の投資、研究環境の整備、さらに科学技術分野における戦略的重点化を打ち出し、これに沿って開発研究が実施されてきました。このたび、第3期科学技術基本計画(平成18〜22年度)が策定され、現在の人口問題、環境問題等の解決にむけて、社会・国民に支持される科学技術を着実に発展させるために必要な主要施策が提示されました。5年間の政府研究開発投資については、厳しい国家財政にありますが、第3期計画中も科学技術の振興を継続するため総額規模約25兆円が設定されています。これは、世界水準の優れた成果を追求する上で基盤投資の拡充が必要との観点にたつもので、さらなる研究開発の質の向上を求めています。

第3期基本計画では、科学技術は国民の理解と支持を得たものであり、研究開発の成果を社会に還元することが重要であるとしています。そして、科学技術力の基盤をインフラ整備などの「モノ」から、能力を十分に発揮できる「人」に移すことを求めています。とくに、若手研究者、女性研究者、外国人研究者の自立の支援や活躍の促進、さらに、大学の人材育成機能の強化に向けて、支援制度の改善や研究資金の配分を高めるべきであると、人材の育成・確保の必要性を強調しています。また、研究費の配分については、過度の集中を排除する必要があり、競争的資金制度を核にしながら研究費が有効に活用され効果的・効率的に研究推進が行われるとともに、競争的資金等による研究費を人材の育成、活用にも充当すべきであるとしています。

研究開発の成果については、成果が国民に十分理解できるように、説明責任を果たすことを求めています。また、研究者の評価に関しては、研究水準を向上させるために、評価は具体的な指針に則って適切に行うこととしており、評価の透明性・公正さを確保する上で、適切な資源配分に向けての評価システムの改革も必要であるとしています。

今後5年間に推進すべき科学技術について、基礎研究をいっそう推進させることに加え、研究投資の選択と集中を図るために、国家的・社会的に高い要請のある「政策課題対応型研究開発」の分野が提示されました。すなわち、重点投資すべき課題を「重点推進」と「推進分野」とに分類し、前者では、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野、後者では、エネルギー、ものづくり技術、社会基盤、フロンティアの4分野の、計8分野を設定しました。さらに、この8分野について、(1) 状況認識、(2) 目標設定(研究開発目標・成果目標・政府の責任部署)、(3) 重要な研究開発課題(今後5年間に政府が取り組むべき重要な課題の抽出)、(4) 戦略重点科学技術(特に集中投資すべき科学技術)、(5) 研究開発の推進方策(取組みを円滑に進めるための方策)が示されました。なお、重要研究課題として273課題、集中投資をすべき戦略重点科学技術として「地球観測技術」「次世代スーパーコンピュータ」「宇宙輸送システム」など62課題が選定されました。

環境分野では、「環境と経済の両立−環境と経済を両立し持続可能な発展を実現」を大政策目標に掲げました。重要な研究課題として、緊急性・重大性、国民生活の質の向上、産業経済の活性化などの観点から、「気候変動研究領域」「化学物質リスク・安全管理研究領域」「水・物質循環と流域圏領域」「生態系管理研究領域」「3R(発生抑制・再利用・リサイクル)技術研究領域」「バイオマス利活用研究領域」の6領域が設定され、その中で57課題の重要研究課題、14課題の戦略重点科学技術が示されました。

なお、第3期科学技術基本計画の本文は文部科学省のサイトで公開されています。

「科学技術基本計画−文部科学省」
(http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/main5_a4.htm)

目次

はじめに

第1章 基本理念

1. 科学技術をめぐる諸情勢

(1) 科学技術施策の進捗状況

(1) 政府研究開発投資総額

(2) 科学技術の戦略的重点化

(3) 競争的な研究開発環境の整備等研究開発システムの改革

(4) 産学官連携その他の科学技術システムの改革

(2) 科学技術施策の成果

(3) 科学技術をめぐる内外の環境変化と科学技術の役割

2. 第3期基本計画における基本姿勢

(1) 社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術

(2) 人材育成と競争的環境の重視 〜 モノから人へ、機関における個人の重視

3. 科学技術政策の理念と政策目標

(1) 第3期基本計画の理念と政策目標

(2) 科学技術による世界・社会・国民への貢献

4. 政府研究開発投資

第2章 科学技術の戦略的重点化

1. 基礎研究の推進

2. 政策課題対応型研究開発における重点化

(1) 「重点推進4分野」及び「推進4分野」

(2) 分野別推進戦略の策定

(3) 「戦略重点科学技術」の選定

3. 分野別推進戦略の策定及び実施に当たり考慮すべき事項

(1) 新興領域・融合領域への対応

(2) 政策目標との関係の明確化及び研究開発目標の設定

(3) 戦略重点科学技術に係る横断的な配慮事項

(1) 社会的課題を早急に解決するために選定されるもの

(2) 国際的な科学技術競争を勝ち抜くために選定されるもの

(3) 国家的な基幹技術として選定されるもの

(4) 分野別推進戦略の効果的な実施 〜 「活きた戦略」の実現

第3章 科学技術システム改革

1. 人材の育成、確保、活躍の促進

(1) 個々の人材が活きる環境の形成

(1) 公正で透明性の高い人事システムの徹底

(2) 若手研究者の自立支援

(3) 人材の流動性の向上

(4) 自校出身者比率の抑制

(5) 女性研究者の活躍促進

(6) 外国人研究者の活躍促進

(7) 優れた高齢研究者の能力の活用

(2) 大学における人材育成機能の強化

(1) 大学における人材育成

(2) 大学院教育の抜本的強化

(3) 大学院教育の改革に係る取組計画の策定

(4) 博士課程在学者への経済的支援の拡充

(3) 社会のニーズに応える人材の育成

(1) 産学が協働した人材育成

(2) 博士号取得者の産業界等での活躍促進

(3) 知の活用や社会還元を担う多様な人材の養成

(4) 次代の科学技術を担う人材の裾野の拡大

(1) 知的好奇心に溢れた子どもの育成

(2) 才能ある子どもの個性・能力の伸長

2. 科学の発展と絶えざるイノベーションの創出

(1) 競争的環境の醸成

(1) 競争的資金及び間接経費の拡充

(2) 組織における競争的環境の醸成

(3) 競争的資金に係る制度改革の推進

(2) 大学の競争力の強化

(1) 世界の科学技術をリードする大学の形成

(2) 個性・特色を活かした大学の活性化

(3) イノベーションを生み出すシステムの強化

(1) 研究開発の発展段階に応じた多様な研究費制度の整備

(2) 産学官の持続的・発展的な連携システムの構築

(3) 公的部門における新技術の活用促進

(4) 研究開発型ベンチャー等の起業活動の振興

(5) 民間企業による研究開発の促進

(4) 地域イノベーション・システムの構築と活力ある地域づくり

(1) 地域クラスターの形成

(2) 地域における科学技術施策の円滑な展開

(5) 研究開発の効果的・効率的推進

(1) 研究費の有効活用

(2) 研究費における人材の育成・活用の重視

(3) 評価システムの改革

(6) 円滑な科学技術活動と成果還元に向けた制度・運用上の隘路の解消

3. 科学技術振興のための基盤の強化

(1) 施設・設備の計画的・重点的整備

(1) 国立大学法人、公的研究機関等の施設の整備

(2) 国立大学法人、公的研究機関等の設備の整備

(3) 公立大学の施設・設備の整備

(4) 私立大学の施設・設備の整備

(5) 先端大型共用研究設備の整備・共用の促進

(2) 知的基盤の整備

(1) 知的基盤の戦略的な重点整備

(2) 効率的な整備・利用を促進するための体制構築

(3) 知的財産の創造・保護・活用

(4) 標準化への積極的対応

(5) 研究情報基盤の整備

(6) 学協会の活動の促進

(7) 公的研究機関における研究開発の推進

4. 国際活動の戦略的推進

(1) 国際活動の体系的な取組

(2) アジア諸国との協力

(3) 国際活動強化のための環境整備と優れた外国人研究者受入れの促進

第4章 社会・国民に支持される科学技術

1. 科学技術が及ぼす倫理的・法的・社会的課題への責任ある取組

2. 科学技術に関する説明責任と情報発信の強化

3. 科学技術に関する国民意識の醸成

4. 国民の科学技術への主体的な参加の促進

第5章 総合科学技術会議の役割

1. 運営の基本

2. 具体的取組

(1) 政府研究開発の効果的・効率的推進

(2) 科学技術システム改革の推進

(3) 社会・国民に支持される科学技術

(4) 国際活動の戦略的推進

(5) 円滑な科学技術活動と成果還元に向けた制度・運用上の隘路の解消

(6) 科学技術基本計画の適切なフォローアップとその進捗の促進

前の記事 ページの先頭へ 次の記事