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情報:農業と環境 No.73 (2006.5)
独立行政法人農業環境技術研究所

山村光司氏: 第50回日本応用動物昆虫学会賞を受賞

当研究所の職員である山村光司氏(受賞時の所属: 生物環境安全部 昆虫研究グループ、現所属: 生物多様性研究領域)が第50回日本応用動物昆虫学会賞を受賞し、3月27日に開催された同学会第50回総会において授与式と受賞記念講演が行われました。業績題名および授与理由の概要は以下のとおりです。

昆虫の個体群パラメーター推定のための統計学的解析手法に関する研究
山村光司

授与理由の概要

学問分野を問わず、研究の飛躍的な発展を可能にしてきたのは画期的な解析法の開発である。精密な制御が困難な野外調査・実験データの解析はとりわけ難しい。山村氏は、誤差の多いデータから死亡率、密度、拡散率などの個体群パラメーターをいかにして高精度かつ省力的に推定するかという難題に精力的に取り組み、汎用性と実用性を兼備した数々の統計学的解析法を開発してきた。当該分野における国際的第一人者として活躍されている山村博士の独創性と研究姿勢を示す標記の業績に対し、日本応用動物昆虫学会賞を授与したい。

昆虫の死亡率推定法として広く使われてきた Kiritani-Nakasuji-Manly 法においては生存率一定という仮定が適用上の制約になっていた。山村氏はこの制約を緩和するとともに計算法を簡易化し、汎用性の高い解析法に発展させた(Yamamura, 1998)。成虫の密度推定法として重要な標識再捕法では、1回放飼により推定精度を損なうことなく簡便に使える手法を開発した(Yamamura et al.,1992)。さらに、個体群変動要因の解析手法として定番であった key-factor 分析が一般的な分散分析法と密接な関係にあることを発見し,それらを統合する新たな統計解析手法(key-factor/key-stage 分析法)を開発した(Yamamura, 1999)。昆虫の拡散距離の予測に関しては,ブラウン運動モデルが従来は用いられてきたが,このモデルは実際の昆虫の拡散にはうまく当てはまらないため,近年になって大きな問題となっていた。山村氏は,環境変動を考慮すればこの問題が解決できることを示し,拡散距離の新たな予測法を開発した(Yamamura, 2004)。なお、山村氏は統計学的解析手法の助言者・指導者としてはかり知れない貢献をしてきており、わが国の野外応用動物昆虫学研究全体のレベルアップに多大な貢献をした点でも傑出している。

<引用文献>

Yamamura, K. (1999) Key-factor/key-stage analysis for life table data. Ecology 80:533-537

Yamamura, K. (1998) A simple method to estimate insect mortality from field census data: a modification of the Kiritani-Nakasuji-Manly method. Researches on Population Ecology 40:335-340

Yamamura, K., Wakamura, S. and Kozai, S. (1992) A method for population estimation from a single release experiment. Applied Entomology and Zoology 27:9-17

Yamamura, K. (2004) Dispersal distance of corn pollen under fluctuating diffusion coefficient. Population Ecology 46:87-101

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