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情報:農業と環境 No.79 (2006.11)
独立行政法人農業環境技術研究所

公開セミナー: 外来植物のリスクを調べて、その蔓延を防止する −外来植物とどう対峙するか?− が岡山市で開催された

平成18年8月5日(土曜日)、岡山大学創立五十周年記念館多目的ホールで、公開セミナー 「外来植物のリスクを調べて、その蔓延を防止する −外来植物とどう対峙するか?−」 が開催されました。

このセミナーは、科学技術振興調整費重要問題解決型プロジェクト 「外来植物のリスク評価と蔓延防止策」 のアウトリーチ活動として、農業環境技術研究所が主催し、岡山大学環境理工学部、日本雑草学会雑草利用研究会、児島湖流域エコウェブの後援によって行われたものです。

参加者は165人で、内訳は、一般市民の方83人、行政関係者14人、学生28人、研究関係者40人でした。

開催の趣旨

マングースやブラックバスなど、さまざまな外来生物による被害を防止するために、2005年6月に「外来生物被害防止法」が施行されました。 この法律では、日本固有の動植物の生存、人間の健康、農業生産に脅威となる外来の動植物を対象に、それらの取り扱いを規制します。これまでにリストアップされた規制対象となる動植物には、皆様がよくご承知の種類が多く含まれ、その数はこれからも増加して行くと思われます。

この法律は、違反すると罰金が個人では最高で300万円、禁固3年以内というきびしいものですが、一般の方にはその内容が十分に理解されているとはいえません。

農業環境技術研究所は、この法律の円滑な実施に貢献するために、2005年度からプロジェクト研究 「外来植物のリスク評価と蔓延防止策」 を開始しています。この研究では、環境省や農林水産省の担当部局へ、(1) 外来植物のリスクを評価する方法、(2) 規制すべき外来植物種、(3) 被害の大きい外来植物の効率的で安全な防除法などについて、提言して行きます。

この公開セミナーでは、法律の概要をわかりやすくお話しするとともに、外来植物に的をしぼって、さまざまなリスクと防除に関する研究成果を紹介しました。また、たくさんの参加者と、外来植物の功罪について活発な意見交換を行いました。みなさんからいただいたご意見は、私どもの今後の研究計画の糧として、活かして行きたいと考えています。

プログラム

はじめに: 「外来生物法」とプロジェクトの目的について

藤井義晴 (農業環境技術研究所)

1) 園芸植物園と外来生物法

城山 豊 (草津市立水生植物公園みずの森)

2) アゾラの問題あれこれ

岸田 芳朗 (岡山大学農学部)

3) 岡山県南部水系に発生する外来水生植物から学ぶこと

沖 陽子 (岡山大学環境理工学部)

4) 外来植物シナダレスズメガヤの防除技術の開発を目指して

大谷一郎 (近畿中国四国農業研究センター)

5) アレロパシーの強い外来植物、および有毒成分を含む外来植物

藤井義晴 (農業環境技術研究所)

6) 外来植物の利点と問題点

橋爪 健 (雪印種苗)

フリートーク −外来植物とどう対峙するか?−

(会場からのご意見・質疑応答と討論)

司会: 足立忠司 (岡山大学環境理工学部長)

コメンテーター: 山崎美津夫 (水草研究家)

論議の概要

岡山大学環境理工学部長の足立教授による開催あいさつを皮切りに、上の演題の発表と関連質疑が行われました。今回の公開セミナーは、プロジェクトの中でも水生の外来植物の問題を担当していただいている岡山大学の沖陽子先生を中心にまとめていただきました。園芸植物園と外来生物法に関する発表では、NHK「趣味の園芸」の講師としても著名な城山先生から、とくに水生植物の園芸種とその逸脱の問題についてわかりやすくご説明いただきました。

アゾラ農法として農業にも利用されていますが、外来のアゾラは特定外来生物に指定されています。この経緯を岡山大学の岸田先生にご説明いただきました。前回の公開セミナーで話題になったニセアカシア問題(ニセアカシアは河川敷で繁茂するのでそこに生息している在来植物を駆逐するかもしれないから、駆除すべきだという指摘に対して、ミツバチの優良な蜜源として産業的な価値が高いから今後も有効に利用すべきだという反論がある)と同様の問題が懸念されます。新たな園芸植物や緑化植物に関しても、白熱した討論が行われました。

フリートークの時間には、会場からの意見や質問を幅広くいただくため、事前に質問票を配布しました。質問票に対する応答を中心に、活発な意見交換がありました。

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