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情報:農業と環境 No.99 (2008年7月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

COST859 「植物技術を利用した持続的土地利用と食品安全性の向上」 に関する作業部会1 (2008年5月、スロバキア (スモレニス)) 参加報告

COST (European CO-operation in the field of Scientific and Technical Research) は、ヨーロッパ各国で共同研究を行うための枠組みです。COST859 (http://w3.gre.ac.uk/cost859/) は、「植物技術を利用した持続的土地利用と食品安全性の向上」というテーマで2004年―2009年の5年間にわたって行われており、29か国が参加しています。COST859 では、植物、食品中の汚染物質の動態解明と制御技術、経済的な植物技術による修復技術、フードチェーンにおける汚染物質の低減技術、食用作物中の必須(ひっす)元素の強化などの研究を行っており、これらの技術開発により、持続的土地・水資源の利用、汚染地の修復、安全で栄養の高い食品の供給をめざしています。

4つの作業部会(WG)があり、それぞれのテーマは以下のようになっています。

WG1 「植物による栄養素および汚染物質の吸収/排除と移行」

WG2 「分子生物学的手法を用いた植物技術の開発」

WG3 「食用作物の栄養価と安全性の改善」

WG4 「植物技術の統合と応用」

それぞれの作業部会で毎年1回の会合が開かれ、2つの作業部会によるジョイントミーティングも年に1、2回開催されています。開催地は各国の持ち回りで行われます。今年のWG1の会合はスロバキアのスモレニスで、5月22日から24日まで開催されました。参加者は、各国の大学等研究機関の研究員など、ヨーロッパとインドから約70人で、わが国からは農業環境技術研究所から3名が参加しました。

バスから見たブラティスラバ城(写真)

写真1 ドナウ川にかかる橋を走るバスから見たブラティスラバ城

スモレニスはスロバキアの首都ブラティスラバから車で1時間くらいの場所にあります。ブラティスラバにも空港がありますが、ウィーンからバスで1時間以内 (バス代9ユーロ) の距離にあるため、今回はウィーン経由で入国しました。

会議はスロバキア科学院が管理するお城で行われました。

会場のスモレニス城(写真)

写真2 会場のスモレニス城

会議は、セッション1「微量元素の吸収と分布1」、セッション2「微量元素の吸収と分布2」、セッション3「植物による有機汚染物質の吸収と代謝」、セッション4「ファイトレメディエーション(植物を用いた修復)を改良するための植物と微生物の相互作用」、セッション5「汚染物質の生物による利用性を操作するためのツール1」、セッション6「汚染物質の生物による利用性を操作するためのツール2」、「総合討論」の順に行われました。農業環境技術研究所から参加した石川主任研究員により「稲のカドミウムとヒ素の品種間差異」がセッション2で紹介されました。ポスター発表も行われ、報告者(荒尾)と森 農環研特別研究員が、「ナスおよびナス近縁種における根のカドミウム局在性」、「ナスとナス近縁種におけるカドミウム吸収・移行の比較」の発表を行いました。

グンバイナズナ(写真)

写真3 グンバイナズナ

スロバキアは歴史的に鉱山が発達していて、鉱山の町として栄えたバンスカ・スティアヴニッツァは、世界遺産に指定されています。バンスカ・スティアヴニッツァには金山、銀山があり、その廃石の山を見学しました。そこにはカドミウムなどの重金属が集積しているため、重金属耐性の植物が見られます。それらの中からグンバイナズナのような重金属超集積植物が見つかり、それらを用いたファイトレメディエーションの研究が盛んに行われています。

私たちが行っているカドミウムなど重金属のリスク管理に関する研究は、日本だけでなく世界的に重要な課題です。グンバイナズナのような 「雑草」 をそのまま日本の農耕地で用いてファイトレメディエーションを行うことは困難であると考えられますが、それらの研究を行っている多くの欧米の研究者と情報交換をしながら日本での技術開発に生かすことが大切だと思います。

(土壌環境研究領域・重金属リスク管理RPリーダー 荒尾知人)

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