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情報:農業と環境 No.110 (2009年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

映画の紹介: キング・コーン −世界を作る魔法の一粒、 監督:アーロン・ウルフ、 制作・出演:イアン・チーニー、カート・エリス、 (2007年/アメリカ/90分/カラー)

アメリカの大学を卒業した二人の若者が、アメリカの農作物生産とその利用に興味を持ち、アイオワ州で畑1エーカー(40アール)を借りて、トウモロコシを栽培するところから話がはじまる。ゴーグルをかけて無水アンモニアを肥料として注入し、18分で除草剤抵抗性組換えトウモロコシ3万粒余りの種を播(ま)き、強力な除草剤を散布するが、それ以外はすることがない。そこで、トウモロコシがどこへ出荷されるのかを調べるために旅に出る。牛の飼料として使われているコロラド州では、アメリカの肉牛の90%が濃厚飼料で育てられ、子牛を半年間だけ肥育して、脂肪のたっぷりとついた肉となることを知る。また、アメリカでもっとも多く使用されている甘味料がコーンシロップであり、コーンスターチやコーンプロテイン、コーン油と、ありとあらゆる食品がトウモロコシから作られていることも分かってくる。

秋、トウモロコシの収穫量は5トン (ヘクタール当たり12トン) にもなるが、収支は赤字。しかし、政府からの補助金でなんとか利益が出る。それだけの価格支持を受けて低い売値に抑えられ、ハンバーガーが1ドルで食べられるというシステムが理解されるようになる。アメリカが1970年代、食糧が過剰基調の際、減反政策から強気の生産拡大に舵(かじ)を切った当時の農務長官アール・バッツを老人ホームに訪ねてインタビューをする (バッツは2008年2月に死去)。バッツは胸をはって答える。「いまや食費が収入に占める割合は当時の半分となり、そのお金を他のことに使えるようになったではないか」。しかし、トウモロコシの消費拡大のために飼料や食品添加物への利用を促進し、その結果としてアメリカ人は肥満や糖尿病などの栄養過多に伴う疾患に苦しんでいると、この映画は告発する。そして、日本の自給飼料も壊滅したことを付け加えなくてはならない。アメリカの研究者はその政策に従い、より収量が多く、高デンプン含量と引き替えにアミノ酸などの栄養価が低いトウモロコシを育種し、効率的な農作業や家畜の肥育のための技術を開発してきたことが思い起こされる。また、今やアメリカの農家は規模拡大を続けるか、脱落するかの二者択一に陥っていることも。

この映画は、アメリカにおけるトウモロコシ生産が、農業と食品業界の利潤追求という目的に沿って、国家のコントロールのもとで、国民の健康を無視した、巨大なシステムの中で行われていることを訴えている。それに対する答えは明らかである。さらに、アメリカのみならず、日本の農業と食品を考えるうえで、重要な情報を提供している。

環境問題への食い込みが足りないと感じていたら、映画パンフレットによればバイオエタノールや化学肥料を含め、環境問題を扱った映画を撮影中とのこと。続編に期待したい。なお、キング・コーンとはキング・コングの駄洒落(だじゃれ)かと思っていたが、今や世界でもっとも生産量が多く、アメリカでもっとも輸出量が多い (日本は世界でもっとも輸入量が多い)、農作物の王様という意味であることが理解される。

4月25日から東京および順次全国主要都市で公開。

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