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情報:農業と環境 No.111 (2009年7月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

外来種:「違和感」を忘れずに
(常陽新聞連載「ふしぎを追って ―研究室の扉を開く」より)

暖かくなって水田にも水が入り始めています。田んぼのまわりの水路では、時々アメリカザリガニを見かけることも多くなりました。

このアメリカザリガニ、実は1927年に日本に持ち込まれた 「外来種」 (もともとそこには住んでいなかった生物) です。食用ガエルのえさとして輸入されたものが逃げ出し、今では日本全国に広く分布しています。アメリカザリガニは水田の畦 (あぜ) に穴を開けたりイネの根を食い荒らしたりして農業に影響を与える、困った生き物です。また、水草を食べ尽くすなど日本にもともと住んでいる生物にも影響を与えることが知られています。しかし、こういった問題はあまり取り上げられることがありませんし、ザリガニを飼ったり放したりすることはごく普通に行われています。

外来種には、もともとそこに住んでいる生物や人の生活に影響を与えるものが数多く知られていますが、侵入してからの時間がたつと 「慣れ」が生じ、その影響は忘れられがちです。しかし、その外来種がまだ入り込んでいない地域に移動すれば、そこでは新たな被害が発生します。侵入した外来種の存在に慣れ、さらに広がっていくことを許してしまうことは、外来種の問題が広がっていく原因の一つにもなります。それを防ぐためには、その外来種に関する知識と対策も大切ですが、その前に、自然の中にその外来種が突然現れた時に感じる、私たち自身の 「違和感」 を忘れないことが大切です。

今、関東地方の川や湖では困った外来種が分布を広げつつあります。これはカワヒバリガイという中国大陸原産の二枚貝で、コンクリートや岩の表面に付着して増殖し、水を流すパイプや水路を詰まらせる被害をもたらします。関東地域では発見されて間もないため、この貝をまだ見たことのない人も多いでしょうが、この貝が大発生している光景はかなり気持ち悪く、普通ではないという印象を強く残します。しかし、放っておけばこの光景にもやがて慣れてしまうでしょう。この“気持ち悪さ”を忘れず、それが広がるのを防ぐために何ができるかを考えること。これを外来種の問題に取り組む出発点にしてほしいと思います。

カワヒバリガイは、利根川とその周辺に分布を広げつつあります。興味のある方は実際にこの貝が自分の身近な自然に入り込んでいないか、探してみてはいかがでしょうか。幸いに、まだ侵入していないのなら、その状態をどうやって長持ちさせられるか、一緒に考えていきましょう。

カワヒバリガイ写真と分布図

カワヒバリガイと利根川水系におけるカワヒバリガイの分布図

(農業環境技術研究所 生物多様性研究領域 伊藤健二)

農業環境技術研究所は、一般読者向けの研究紹介記事「ふしぎを追って−研究室の扉を開く」を、24回にわたって常陽新聞に連載しました。上の記事は、平成21年4月8日に掲載されたものを、常陽新聞新社の許可を得て転載しています。

もっと知りたい方は・・・

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