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情報:農業と環境 No.113 (2009年9月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

NCEAS ワーキンググループ会合 「侵入昆虫の撲滅戦略構築へ向けた個体群生態学の応用」 (7月 米国サンタバーバラ)参加報告

米国立生態解析統合センター(NCEAS、http://www.nceas.ucsb.edu/)は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究センターの1つで、生態学の諸問題を解決するための学際的研究を強力に推進しています。常勤の研究者を置かず、世界各国から選ばれた研究者やポスドクが一時的に所属し、プロジェクト型の研究を行っています。

今回私(山中)が参加したワーキンググループ 「侵入昆虫の撲滅戦略構築へ向けた個体群生態学の応用」 は、米国農務省森林局のリーブホールド博士を中心に申請された、外部資金によるプロジェクト研究で、米国8名、ニュージーランド2名、チェコ1名、日本1名の研究者が参加しています。このワーキンググループでは、野外研究を専門とする研究者が侵入昆虫による被害データを提供し、理論生態学者が数理モデルやシミュレーションモデルを構築して解析を進め、経済学を専門とする研究者が参画して、侵入害虫を根絶する経費と利点の評価を試みる計画です。2年間で3回の会合を予定しており、今回は顔合わせと課題の設定、サブグループの構成などを行いました。

会議は4日間連続して行われました。初日は、一人一人が自分の専門分野とアイデアをプレゼンテーションし、それにあわせて取り組むべき課題を網羅的にリストアップします。次に、選ばれた課題が、それぞれどのように関連しているか議論を進め、5つの大きなテーマにしぼります。議論を進める中で、それぞれのサブグループのリーダーを務める研究者が自然と選ばれ、リーダー以外の研究者は、それぞれの関心に従って、2つないし3つのサブグループに所属します。

今回選ばれたテーマは、「過去の侵入害虫根絶の試みを概観する」、「侵入害虫根絶に対する経済学的アプローチ」、「侵入害虫防除戦略の組み合わせ効果の検証」、「侵入害虫防除戦略の組み合わせ効果の理論的アプローチ」、「侵入害虫の検出と根絶のコスト最適化」 の5つです。2日目からは、各サブグループでの議論が進められました。私は、「過去の侵入害虫根絶の試みを概観する」 で、日本・アジアの根絶事業をまとめる仕事と、「侵入害虫根絶に対する経済学的アプローチ」 の中で、モデルの構築・費用に関連するパラメタの設定を担当することになりました。今後、第2回会議までの間、メールやインターネット会議を通じて、サブグループ内での議論を進める予定です。

専門分野の異なる研究者が、顔を突き合わせて白熱した議論を交わすため、かなり緊張の度合いの高い会議となりました。高度に概念的な議論に加えて、ほぼ全員が英語のネイティブスピーカーのため、英語を母国語としない私は、言いたいことがうまく伝えられなかったり、議論の途中で置いて行かれたりして、歯がゆい思いをしました。グループ討論で自分の主張を理解してもらうためには、高度な英会話の能力以上に、ディベートの能力が不可欠なようで、まだまだ修行が必要だと痛感しました。

会議が終わると、それぞれ気の合う仲間と街に繰り出しました。サンタバーバラは、20世紀初頭から、計画的にスペインの文化を取り入れた街作りを行っており、さわやかで美しい港町です。議論ですっかり熱くなった頭を、ビールで冷やして、明日への英気を養いました。

NCEASのオフィス(写真)

写真1 NCEASのオフィス
NCEASは加州大サンタバーバラ校キャンパスとは別に、ダウンタウンにあります。

会合の参加者(写真)

写真2 ビヤホールにて参加者たちと
サンタバーバラは風光明媚(めいび)な港町です。会議の後は、街に繰り出して一杯!

(生物多様性研究領域 山中武彦)

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