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情報:農業と環境 No.113 (2009年9月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際気象・大気科学学会(IAMAS)、国際海洋物理科学協会(IAPSO)、極地科学協会(IACS)2009年合同大会(MOCA-09)(7月 カナダ(モントリオール)) 参加報告

2009年7月20日〜29日、カナダのモントリオール市で開催された国際気象・大気科学学会(IAMAS)、国際海洋物理科学協会(IAPSO)、極地科学協会(IACS)2009年合同大会(MOCA-09)に参加しました。

この大会は、4年に一度の国際測地学・地球物理学連合総会(IUGG)の中間の会合にあたる、地球温暖化に関連の深い学会の合同大会です。今回のテーマは 「Our Warming Planet」(温暖化する我らの惑星) で、地球温暖化関連の発表が多く、地元のテレビや新聞でも大きく報道されました。

この大会の参加者は約1,300人 (発表者と共著者をあわせると約6,800人) で、16の会場で同時進行し、54のセッションが行われました。さらに、昼や夜の時間を利用した各学会の関連会議も開催されました。カナダはもちろん、中国、日本からの参加者も多く見られました。また、会議の日程では、毎日の午後3時から4時半までは、お茶とポスター発表の時間に設定され、大学院生など若手研究者の発表も多く、各セッション内外で活気にあふれた議論が展開されました。

MOCA-09の会場
写真 大会会場のようす

私は、エアロゾルなど大気汚染物と気候、モンスーン観測、気候モデルおよび雪氷変化などのセッションに参加し、「地形が天気と気候に及ぼす影響(Topographic Effects on Weather and Climate)」のセッションで、「チベット高原における長期高山気象観測(Long-term Meteorological Observations in High Mountain Region on the Tibetan Plateau)のタイトルで口頭発表を行いました。

発表の内容は、チベット高原の中央部に設定した標高 4300mから 5500mのトランゼクトに沿った10地点で実施した長期自動気象観測の結果の一部でした。標高に対する気温の逓減(ていげん)率は、夏から秋にかけての気温低下時にはほぼ一定で、0.65 〜 0.69 ℃/100m でしたが、冬には、4950m以下の標高に常に気温の逆転層ができ、4500mから 4800mの所に温暖層があることなどを明らかにしました。このような高い標高で標高差も大きい地域での多地点の連続気象観測は、地球の第三の極と呼ばれるチベット高原においては初めてで、世界的にも貴重な試みでした。厳しい自然環境の中でさまざまな困難を乗り越えて構築された長期観測ネットワークから得られる気象データは、地球温暖化の進行状況やその影響が、どのような形で現れるかについて、非常に注目されるところでした。

大会の期間中に、アフリカのキリマンジャロで同じような高山観測を行ったスイスの研究者と意見交換ができ、今後の研究推進に役立つ、新たな情報を得ることができました。

2年後の第25回 IUGG 総会は、「Earth on the edge: Science for a sustainable planet」(瀬戸際にある地球:持続的な惑星のための科学) というテーマで、2011年6月27日から7月8日まで、オーストラリアのメルボルンで開催される予定です。

(大気環境研究領域 杜 明遠)

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