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情報:農業と環境 No.117 (2010年1月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

シンポジウム 「農業に有用な生物多様性の指標開発」 が開催された

2009年11月18日(水曜日)午後、ベルサール九段(東京都千代田区)において、シンポジウム「農業に有用な生物多様性の指標開発」が開催されました。

安全な食料を安定的に供給できる持続的農業を実現するため、環境保全型農業やIPM (総合的病害虫・雑草管理) など、生物多様性に配慮した施策の普及が進められています。これらの施策をさらに効率的に推進するために、科学的根拠に基づいて、その効果を定量的に把握できる生物指標を開発することが必要です。

そこで、天敵などの「農業に有用な生物多様性」を対象として、農業の現場で調査できる、わかりやすい指標とそれらを使った簡便な評価手法を開発するため、農林水産省プロジェクト研究 「農業に有用な生物多様性の指標及び評価手法の開発」 が実施されています。

今回のシンポジウムは、プロジェクトの目的とこれまでに得られた研究成果を紹介し、今後農業現場で指標を利用する方々や生物多様性に関心を持っておられる方々との情報交換や議論を通じて、指標や評価手法に対する理解を深めていただくために開催しました。

当日の参加者数は206名で、内訳は、プロジェクト関係者111名、行政担当者(国・県など)42名、大学関係者10名、マスコミ関係者7名、民間団体・市民ほか36名でした。

第1部 (講演の部) の基調講演では、海外における指標活用の先行事例として、EU(欧州連合)の農業環境政策におけるクロスコンプライアンスと環境支払いの補完的関係の実態とその問題点、クロスコンプライアンスの要件設定基準のあり方などについて学習院女子大学の荘林幹太郎教授にわかりやすくご説明いただきました。その後、プロジェクト研究の概要と2つの取り組み事例が具体的データに基づいて紹介され、さらに「アジア太平洋昆虫学会議」(2009年10月、北京)におけるプロジェクト成果の発表に対する評価や反響について報告がありました。

第2部 (ポスター発表の部) では、プロジェクト全課題の担当者によるポスター発表と現時点における指標候補種の標本、開発中のトラップなどの実物展示が行われ、約2時間にわたって参加者間で活発な意見交換が行われました。

講演後の質疑およびアンケートでは、プロジェクトの成果と生物多様性の関係について、より明確な説明を希望する声が多く、今後のプロジェクト成果の公表においては、その点を十分考慮する必要があると考えられました。また、各講演の時間が短すぎるとのご指摘をいただきました。反省点として次の機会に生かしたいと思います。

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