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情報:農業と環境 No.118 (2010年2月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第4回遺伝子組換え作物共存会議 (GMCC 09) (11月、オーストラリア) 参加報告

メルボルン会議・展示センター(写真)

写真1 メルボルン会議・展示センター(国際会議の会場)

11月10日から12日までオーストラリア・メルボルン市の会議・展示センター(写真1)で開催された、「遺伝子組換え作物共存会議 (GMCC 09)」 に参加しました。この会議は、「Forth International Conference on Coexistence between Genetically Modified (GM) and no-GM based Agricultural Supply Chains」 という長い名前です。全体を訳すと、「第4回組換え・非組換え農業供給網間の共存に関する国際会議」ということになります。この会議では、組換え作物と非組換え作物を一緒に栽培した場合の交雑可能性の評価方法や交雑や混入が起きた場合の検出方法,さらには消費者に情報を伝える方法など、さまざまなテーマの発表がありました。

私は、広い区域を対象とした交雑の恐れを評価するために、地理情報システム(GIS)というソフトウェアがどのように使えるかを研究しているので、それに関連する発表を中心に聞きました。日本と同様に複雑な土地利用がされているEU各国からは多くの報告があり、広い範囲での交雑を調べるためには GIS を利用することが有効なことがわかりました。しかし、日本では水稲が主な作物であり,さらに水田1枚の面積も小さいので,日本において広範囲の評価を行うためには、別の方法の開発が必要なこともわかりました。また、農業環境技術研究所からは、松尾上席研究員と芝池主任研究員も参加し、遺伝子組換え作物の逸出(いっしゅつ)や、生産や収穫の過程での交雑や混入発生率の評価法について発表しました。

ビクトリア州総督府(写真)

写真2 ビクトリア州総督府(歓迎会の会場)

この会議の歓迎会が、通常は公開されていないビクトリア州総督府(写真2)で開催されました。ビクトリア州総督 de Kretser 夫妻も参加され、冒頭のあいさつでは地球環境問題や食糧問題を解決するためにも、共存のための研究が重要であると述べられました。総督という制度自体はイギリス植民地時代の名残で、現在は名誉職となっていますが、広く大きな視点からのお言葉に、私はたいへん感銘を受けました。現在、日本では遺伝子組換え作物の商業栽培は行われていないので、私が行っている研究もすぐに利用されことはないかも知れません。しかし、地球環境問題や食糧問題を考えた時、日本でも組換え作物を栽培すべきかどうかを判断する時や、栽培が必要になる時が来ると考えられます。その時に正確な情報を伝えるためにも、将来を見すえて自分の研究を行うことが必要だと感じました。

さて、南半球と北半球では季節が反対なのは,皆さんご存じだと思います。会議が開催された11月はじめといえば日本ではもう冬の足音が聞こえてくるころですが、南半球のメルボルンはまさに真夏の陽気でした。最高気温は連日30℃を超えていましたが、湿気があまりないので、日本のように蒸し暑くはありませんでした。ですが、会議場は冷房がよく効いて寒いぐらいで、長旅の疲れもあり会議の後半は体調を崩してしまいました。もし夏のメルボルンに行かれることがあれば,寒さへの対策もしっかりすることをおすすめします。

(生態系計測研究領域 岩崎亘典)

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