農業環境技術研究所 大気環境研究領域の飯泉仁之直任期付研究員が、平成23年度農業情報学会学術奨励賞を受賞しました。
農業情報学会学術奨励賞は、農業情報学会 の会員で「独創性、新規性のある研究業績を精力的に蓄積しつつある概ね40歳以下の若手研究者」に授与されるものです。授賞式と受賞記念講演は、5月12日、東京大学弥生講堂で行なわれました。
飯泉仁之直研究員の授賞理由と研究内容は次のとおりです。
農業経営情報と機構的水稲生育・収量予測モデルを併用した
集落レベルでの水稲収量変動予測等に関する研究
飯泉仁之直
(農業環境技術研究所)
受賞理由
主要研究業績では、乗法モデルのパラメータ推定にはベイズ推定を用い、農業経営特性に応じた収量変動抑制効果の不確実性を確率的表現で明示した。加えて、関連業績(参考文献2)で新たに開発した機構的水稲モデルを使用したことで水稲の生育段階によって異なる気象条件の生育・収量への影響を適切に取り込むことが可能になった。関連業績(参考文献3,4)では水稲減収量が集落の気象条件に加えて農業経営特性にも影響を受けることが示唆されたが、水稲生育段階や農業経営特性に応じた収量変動抑制効果の不確実性が評価されていなかった。主要研究業績では、こうした先行研究の課題を解決する発展的な手法が採用されている。そのうえで、さらに集落レベルの農業経営特性を収量予測に考慮した点に高いオリジナリティがある。
主要研究業績(参考文献1)は、農業情報研究の主要な応用分野である作物収量予測において、局地気象と作物生育プロセス、農業経営特性といった広範な情報の統合・活用を図った顕著な研究成果である。加えて、乗法モデルのパラメータ値の不確実性などによる収量予測の不確実性に留意することの重要性を示した。こうした不確実性の考慮は収量予測に限らず、今後、研究・応用場面で重要性を増すと考えられる。
以上、受賞者の一連の研究は独創性に富むもので、将来的な発展性も多いに期待できる研究と評価できる。
研究内容
主要研究業績では、日別気象データを入力値として県平均での水稲の生育・収量を予測する機構的な広域水稲モデルによる予測収量を、農家の保有労働力の質・量といった集落レベルの農業経営特性を説明変数に取り入れた乗法モデルで修正することで、機構的モデル単体よりも、集落レベルの収量予測精度が向上することを栃木県の140集落を対象に実証した。
参考文献