研究成果発表会 「農作物のリスク低減に向けて −重金属・POPsと農耕地管理−」 が、11月7日(月曜日)、秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区外神田) において開催されました。
わが国では、近年食品安全行政にリスク分析を導入することによって農畜水産物の安全確保に努めています。そのためには危害要因に関する科学的なデータ整備・解析のための手法開発や、リスクを低減するための技術開発が求められます。
このことを受け、農林水産省は委託プロジェクト 「生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発(略称:生産工程)」(平成20〜24年度)を実施しています。本プロジェクトでは、生産から流通加工まで、農畜水産物において重要な危害要因として、化学物質、かび毒、病原微生物を取り上げています。
そこで本発表会では、標記プロジェクトのうち、危害要因としてヒ素およびカドミウム、残留性有機汚染物質 (POPs) を対象としている化学物質チームにおいて、これまで得られた新しい知見を、一般市民を含めた多くの方々に紹介するとともに、今後の研究戦略や課題について議論することを目的としました。
プログラム
開会あいさつ
松田紀子(農林水産技術会議事務局・研究総務官)
宮下C貴(農業環境技術研究所・理事長)
基調講演「土壌汚染をめぐる環境法・政策上の課題 −農用地土壌汚染を中心に−」
浅野直人(福岡大学法学部・教授)
プロジェクトの概要説明
與語靖洋(農業環境技術研究所)
一般講演
(1)農業現場でできる農作物のカドミウム簡易分析法の開発
阿部 薫(農業環境技術研究所)
(2)作物がカドミウムを吸収しないために
牧野知之(農業環境技術研究所)
(3)栽培前に作物の POPs 汚染度を予測する
清家伸康(農業環境技術研究所)
(4)ウリ科作物の POPs 汚染低減のためのあの手この手
大谷 卓(農業環境技術研究所)
ポスター発表: ヒ素・カドミ(14件)、POPs(15件)、全体(3件) 合計 32件
結果の概要
アンケートへの回答では、全体としてよい印象を持っていただいた方が80%以上を占めました。基調講演について、難しい法律の話がとてもわかりやすく、もう少し聞きたかった、一般講演について、いずれも短時間の発表にもかかわらず要点が整理されていた、ポスター発表では十分な意見交換ができたとの回答を多くいただきました。また講演要旨集も高い評価をいただきました。また、質疑応答の時間がほしい、今後も開催を希望する、講演時に使用された図表がほしいなど、要望もいただきました。
今回は、化学物質チームのみの開催であったにもかかわらず、100名を超える方に参加いただき、各講演で取り上げた有害化学物質への関心は依然として高いことがうかがえます。なお、プロジェクトの最終年度となる来年度には、プロジェクト全体の研究発表会を開催することを検討しています。