GRA については「農業と環境」の No.133, No. 134, No. 135 をご参照ください。農業分野の温室効果ガスに関するグローバル・リサーチ・アライアンス(GRA) グループ会合: 農地研究グループ・炭素窒素循環に関する横断的ワーキンググループ合同会合が、EUROSOIL 2012 と同じ会場内において、7月3日と5日の夜に、また、EUROSOIL 2012 閉会後の7日、バーリ郊外の研究所 (Instituto Agronomico Mediterrano: 地中海農業研究所) 内の会議室で終日開催され、日本からはおもに白戸と岸本が参加しました (写真)。
写真 GRA グループ会合のようす
農地研究グループ (GRA Croplands Research Group) は米国とブラジルを共同議長とし、今回は第4回のグループ会合でした。議題は各国の年度報告や共同研究を展開するためのアクション・プランについてで、とくに炭素窒素循環モデルの横断的比較について下記のワーキンググループと連携するため合同会合を開きました。
炭素窒素循環に関する横断的ワーキンググループ (GRA C-N Cross-cutting Working Group) については、これまでのところ、おもな研究の対象が水田以外の農地であり、実質的には「横断的」なワーキンググループとはなっていないため、多くの部分が農地研究グループの研究対象と重なっています。そこで、2つのグループが協力したり、分担を確認したりすることで、2つのグループの活動をより良いものにすることが今回の目的であったと認識しています。
平日の夜に行われた1回目と2回目の会合では、GRA 事務局および農地グループ Steven Shafer 共同議長より、これまでの経緯や、今回の目的、各国から提供された情報の確認作業 (ストックテイキング作業: Stock taking exercise ) の報告、6月に行われた GRA 理事会での決定事項の説明などが行われました。
3回目の1日をかけた会合では、今後の活動について2つのグループ (モデリングとモニタリング) に分けた議論の時間があり、より具体的な議論が進められました。モニタリングについては、前回のグループ会合で提案されたアクション・プランの一つである 「 GRA 農地温室効果ガスネットワーク (GRA Croplands GHG Network) の構築」 について、米国農務省の農業研究サービス (USDA-ARS) の Mark Liebig 博士により具体的なプロポーザルが出されました。GHG network には現在10か国 (アメリカ、アルゼンチン、ウルグアイ、デンマーク、フランス、イタリア、スペイン、日本、韓国、インドネシア) が参加を表明しており、123セットのメタデータがすでに登録されました。会合では GHG network の今後の目標(短期と長期)や、より多くの国の参加のための課題などについて議論しました。登録サイトからすでに公表されたデータセットの統合解析と論文化を、短期に実現可能な目標として進めていくことが合意されました。日本では、温室効果ガス削減や土壌炭素隔離など農地における温暖化緩和策の効果を検証する実証サイトの、全国をカバーする長期的な観測網(とくに統合的な観測サイト)の構築がまだ十分できていないのが現状です。GRA croplands GHG network の構築に積極的にかかわり、世界の動向を注視しつつ、日本独自の GHG network の構築を急ぐべきであると改めて感じました。モデリングについては、これまで進めてきた主要なモデルの相互比較を一歩進めて、具体的な緩和策(施肥管理、有機物管理など)の例を各国から集めて、その効果を複数のモデルで評価する、という試みを実行に移す計画が、おおむね合意されました。
白戸康人(農業環境インベントリーセンター)
岸本文紅(物質循環研究領域)