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農業と環境 No.150 (2012年10月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

2012国際SWAT会議(7月 インド) 参加報告

2012年7月18日から20日までの3日間、2012 International SWAT Conference (ページのURLが変更されました。2014年12月)(米国農務省主催・SWATモデルに関する国際年次総会) が、ニューデリー(インド)の国連人間居住センターにおいて開催されました。

SWAT ( Soil and Water Assessment Tool ) は、米国テキサスA&M大学と米国農務省農業研究局 ( USDA-ARS テキサス州) が中心になって開発を行ってきた、オープンソースの流域圏水・物質循環シミュレーションモデルです。非常に多くの審査論文によって流域圏スケールでの水、土壌流亡、栄養塩、農薬等の解析ツールとして国際的に知られており、欧米では政府機関によって活用されているほか、アジアにおいてもとくに韓国、中国、インド、イランにおいて先進的な研究が進められています。

この会議は世界のSWAT研究者が一堂に会す唯一の機会であり、最新の研究動向が発表されます。2003年のイタリア総会に始まり、国を変えて毎年開催されています。今回は25か国から約200人が参加し、4会場に分かれて126の発表が行われました。発表分野は、水文、気候変動、モデル開発、データ整備、大流域への適用、環境汚染、灌漑(かんがい)、キャリブレーション(パラメータの最適化)、土壌流亡、栄養塩、土壌炭素、洪水など、多くの分野に及びました。

農業環境技術研究所から参加した報告者(坂口)は、水田を含む流域においてSWATを使用する際の問題点とモデルの改良について口頭発表し、SWATの開発を主導している Arnold 博士(米国農務省)から、「水田域での使用を目的としたSWATの改良の方向性をアジア諸国の研究者間で議論して、共通した改良方針を決めてほしい」とコメントをいただきました。韓国や中国でも水田域用にSWATの改良を進めていますが、開発を主導している米国農務省に改良の取り組みを認知していただいたことで、水田域を対象とする米国およびアジア諸国との研究協力の体制がスタートしました。

米国ではメキシコ湾に流出するミシシッピー河流域を対象とした国家的な研究プロジェクトが進行しており、水田を有する日本およびモンスーンアジア諸国においても研究の発展および農業環境保全への寄与が望まれます。

開会式のようす(写真)

写真1 開会式 (2012国際SWAT会議)

左から、SWAT の開発を主導してきた Arnold 博士(米国農務省)、Jones 博士(テキサス A&M 大学)、Nayak 博士(インド国地球科学省長官)、Joseph 氏(ケララ州政府水資源大臣)、Srinivasan 博士(テキサス A&M 大学)、Gosain 博士(インド工科大学)、Khosa 博士(インド工科大学)。

取材のようす(写真)

写真2 取材のようす (2012国際SWAT会議)

昨年の開催国のスペインでもテレビニュースで会議が報道されました。

次の国際 SWAT 会議は、2013年7月15日から19日までフランスで開催されます。また東南アジア分科会が、2013年6月17日から22日までインドネシアで開催されます。

(物質循環研究領域 坂口 敦)

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