2013年10月20日〜24日にインドネシアのバリ島で開催された アジアリモートセンシング国際会議 に参加しました。この会議は、毎年開催されるアジア最大のリモートセンシング国際会議です。
写真1 開会式のようす(バリの太鼓をたたいて開会を宣言)
写真2 会場となった Ambassador City Jomtien ホテル
バリ島といえば知名度トップクラスのリゾート地です。今回会場となった Ambassador City Jomtien ホテルはバリ島でもビーチリゾートとして有名なクタ地区にあり、会場のホテルおよび周辺には、観光客が多く訪れていました。
アジアリモートセンシング国際会議で扱われる内容は、農業、森林、海洋、雪氷、気候変動、教育、アルゴリズム、災害、環境、資源、GIS、GPS、写真測量、地図、健康科学、センサー、衛星と多岐にわたっています。筆者がこの会議に参加するのは、水田に注目されるアジアで開催されているからです。欧米で開催される国際学会では、水田稲作を対象とした研究成果の発表や討議の機会は少ないのですが、アジアで開催されるこの国際会議では、数多くの発表があります。また、水稲自体ではなく、水質など環境問題を扱った発表でも、水田を無視することはできませんので、議論の対象となります。まさに「アジアの、アジアによる、アジアのための」 国際会議なのです。
バリという有名な観光地で開催されるためか、今回は参加人数が例年より多く、事務局発表によれば、参加人数は1,379人、発表件数は口頭発表が366件、ポスターが445件とのことでした。筆者は、1日目に、東日本大震災による津波被害を受けた水田の復旧を衛星データから把握した研究事例について、「 Detection of paddy rice fields recovered from TSUNAMI damages 」 のタイトルで、ポスター発表を行いました。インドネシアは2004年のスマトラ沖地震で大きな津波被害を受けた国ですので、この研究を発表することにしました。しかし、今回は参加者が多かったことに加えて開催期間が短かったために、発表の時間が短く、台湾やマレーシアの研究者とは話せましたが、インドネシアの研究者とはほとんど議論できず、残念でした。
また、会期中に GEO (Group on Earth Observation) - GLAM (GLobal Agricultural Geo-Monitoring) についてのワークショップが開催され、これにも参加しました。今回は、食料安全保障や作物モニタリングに関わる話として少し対象を広めにとり、Asia-RICE (Asia-Rice Crop Estimation and Monitoring) だけでなく、APRSAF (Asia-Pacific Regional Space Agency Forum) - SAFE (Space Applications For Environment) などもジョイントして行われました。コメを対象とするレーダーによる観測実験がインドネシアとベトナムで開始されるため、それについての議論が行われました。
写真3 ペンジョール
写真4 ホテルのロビーに飾られていた稲作を描いたパネル
バリ島はインドネシア共和国の一部ですが、国全体ではイスラム教の信者が多いのに対し、バリ島はヒンドゥー教徒が多数を占めています。会期の中日となる2013年10月23日はバリ・ヒンドゥー教の特別な行事 「ガルンガン」 の日でした。神となった祖先の霊が家族のもとを訪れるといわれており、日本での 「迎え盆」 のような行事だそうです。この 「ガルンガン」 のために 「ペンジョール」 と呼ばれる、竹で作るお飾りのようなものが、寺院の門の前や、家々の前に立てられます。これは、バリ・ヒンドゥー教の唯一神、サン・ヒャン・ウィディ神に対する感謝の念を表すものだそうで、一説には、アグン山に住むとされる龍神、バスキ神を象徴するともいわれ、ペンジョールの椰子(やし)の葉の飾りは龍の背びれを、竹の先にぶら下がったサンピアンと呼ばれる飾りが龍の尾をあらわしているそうです。また、椰子の葉や実、米の菓子、果物や稲、イモやトウモロコシなど穀物類、サトウキビなどがぶら下げられ、大地の実りをいただく農業に関係した伝統行事でもあるようです。また、宿泊したホテルのロビーには、稲作にまつわるパネルが飾られており、インドネシアにおけるコメの重要性がうかがえました。
次回のアジアリモートセンシング国際会議は、2014年10月27日から31日に、ミャンマーのネピドー (Nay Pyi Taw) で開催予定です。
石塚 直樹 (生態系計測研究領域)