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農業と環境 No.167 (2014年3月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際ワークショップ 「気候変動対応型作物生産のための実用的統合技術に対する戦略的アプローチ」(2013年8月 台湾) 参加報告

2013年8月13日から15日に、「気候変動対応型作物生産のための実用的統合技術に対する戦略的アプローチ」に関する国際ワークショップ(International Workshop on Strategic Approach to Climate-Smart Crop Production)が開催されました。

このワークショップは FFTC/ASPAC (Food and Fertilizer Technology Center for The Asian and Pacific Region) が主催して台湾の台中市で開催されたもので、農業環境技術研究所から、桑形と南川の2名が招待講演者として参加しました。

このワークショップが対象とした東南・南アジア地域には、世界の約30%の人々が暮らし、全世界の約半分の貧困と栄養失調の人々を抱えています。この地域の大部分の国々の経済は農業で成り立っていますが、地球温暖化による気候変動が、地域内の農業に大きな影響を与える可能性が心配されています。一方、この地域の農業活動は、メタンや亜酸化窒素(一酸化二窒素)など温室効果ガスの放出源にもなっています。

ワークショップには15名の招待講演者 (台湾4名、日本3名、韓国2名、オーストラリア、マレーシア、フィリピン、タイ、米国、ベトナム各1名) とそのほかの約40名が参加して、この地域の農業に対する気候変動の影響を最小限にするための技術や施策について議論しました。

ワークショップの参加者(集合写真)

写真 ワークショップの参加者

ワークショップは次の5つのセッションで構成されました。

オーストラリアと米国からの招待講演者による2件の基調講演のあと、2つめのセッションで、作物生産の気候変動影響に関する科学的基盤について7件の発表がありました。桑形はこのセッションで 「Agro-meteorological databases for climate-smart agriculture in Monsoon Asia」 というタイトルで、日本における近年のイネ生産への気候変動影響の現状と 「モデル結合型作物気象データベース (MeteoCrop DB)」について紹介しました。MeteoCrop DB は、気候変動が日本各地のイネ生産にどのように影響するかを解析するために開発された気象データベースで、2009年4月より研究所のホームページで公開されています。本データベースでは、全国のアメダス観測点と気象台における気温や日射量などの基本気象要素 (日別値) に加えて、イネの収量や品質に大きな影響をおよぼす水田水温や穂温など、一般の気象観測では得られない水田の微気象データの推定値を全国レベルで提供しています。

一方、南川は 「Monitoring and modeling for evaluating mitigation options of methane emissions from rice fields by water management」 というタイトルで、水田からのメタン放出量におよぼす水管理の影響に関する野外測定と、数理モデル (DNDC-Rice モデル) を用いたメタン放出量推定について話題提供をしました。中干しの期間を延長することで、水田からのメタン放出量をある程度まで削減でき、温室効果ガス削減のための有効な緩和策の一つになっています。メタン放出量の減少程度は気象条件などにより異なりますが、DNDC-Rice モデルを用いた推定によって、中干し期間の延長によるメタン放出の削減量を定量的に評価することができます。

セッション3、4では、8名の話題提供者が、気候変動に対応するための各国における農業技術や栽培システムなどを紹介しました。日本から参加した古在豊樹博士は、植物工場を利用した野菜栽培について話題提供をされました。植物工場は、天候に左右されずに作物を周期的に安定供給でき、病害虫の被害も受けることがありません。技術の進歩によって、植物工場におけるエネルギーや水の利用効率は、以前よりも格段に向上しており、気候変動に対応した有効な作物生産システムの一つとなっています。植物工場については各国の参加者からの関心が高く、パネルディスカッションにおいても、質問や議論で大いに盛り上がりました。

ワークショップの最終日には、現地の特産である water bamboo 栽培やパプリカ園芸栽培の農家の現地視察などを実施しました。

現地視察(water bamboo の収穫)(写真)

写真 現地視察(water bamboo の収穫作業)

今回のワークショップを通して、東南・南アジア地域の研究者の多くが、地球温暖化による気候変動とその農業影響について、大きな関心を持っていることを知ることができました。これらの地域では、温室効果ガスの放出も抑制した持続的な農業生産が求められています。その実現のために、微力ながら貢献できればと考えています。

桑形 恒男 (大気環境研究領域)
南川 和則 (物質循環研究領域)

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