平成24年2月に、河川付着藻類を用いた農薬の毒性試験マニュアル が刊行・公開されました。
農薬は安定した食物生産に有効な資材ですが、農耕地の外に流出した場合には、標的としていない生物へ悪影響を与える懸念があります。とくに日本の農業は水田を中心としているので、そこで使われた農薬が灌漑(かんがい)水を通じて河川に流出しやすいという特徴があります。また、除草剤は水生生物の中でもとくに藻類などの一次生産者に対する毒性が強いので、流出した除草剤の河川生態系に対するリスクを評価する必要があります。
このマニュアルは、河川の生態系中で一次生産者として重要な役割を持っている付着藻類を対象として、農薬のリスクを評価するための毒性試験方法を記したものです。より多数の藻類種への毒性データを、より少ない労力で得られるように試験をデザインしました。また、単なる毒性試験のマニュアルにとどめるのではなく、種の感受性分布の活用に至る流れを包括的に記載することに留意しました。農薬の生態影響評価にかかわる方にはぜひ目を通していただきたい資料です。
なお、このマニュアルは、環境省環境研究総合推進費 「適切なリスク管理対策の選択を可能にする農薬の定量的リスク評価法の開発(C−1102)」(平成23〜25年度) において得られた成果の一部を、農業環境技術研究所の化学物質環境動態・影響評価リサーチプロジェクトの責任において取りまとめたものです。