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農業と環境 No.175 (2014年11月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農林水産技術会議事務局「研究成果」シリーズ紹介(17): 生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発[かび毒・病原微生物(第2編)]

農林水産省農林水産技術会議の委託プロジェクト研究 「生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発」(2008〜2012年度)の研究成果が取りまとめられ、かび毒と病原微生物に関する技術開発の成果が、「プロジェクト研究成果シリーズ522(PDFファイル 17.2 MB、238 ページ)」 として公表されました。

(研究成果522「序文」より抜粋)

近年、BSE 問題など食品の安全性を脅かす重大事件の発生が相次いだことを契機として、農林水産省は、食品中の危害要因を事前に把握し、生産から消費に至る食品供給の各段階において必要な対策を講ずる 「リスク管理」 に取り組んでおり、科学的な根拠に基づいて危害要因を解析するとともに、危害要因への暴露を低減するための技術開発を進めている。

本研究は、農畜水産物の生産現場における活用を想定して、麦類のかび毒汚染防止・低減技術、生食用野菜、畜産物及び水産物における病原微生物のリスク低減技術、並びに病原微生物の迅速検出技術及び効果的な殺菌・制御技術として、小麦赤かび病の適期防除を可能とする正確な開花期予測技術の開発、マルチ栽培を用いたレタスの土壌中サルモネラ防除技術などの開発、家畜由来のサルモネラのデータベースの構築、水産物中のリステリアの増殖抑制技術の開発、食中毒菌の迅速な検出キットの開発、もやしや生野菜などに付着した食中毒菌の殺菌技術の開発などを行ったものであり、食品安全行政、特に生産現場における農畜水産物の安全性の確保に関わる行政の関係者の方々においては、本研究成果の十分な活用、及び各方面への周知に努めて頂ければ幸いである。

このプロジェクト研究のウェブサイト:生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発 では、研究の成果をまとめた冊子(PDFファイル) 「研究トピック」、「技術情報集」 をご覧になれます。

また、このプロジェクト内で農業環境技術研究所が実施した、ムギ類のかび毒の低減技術にかかわる研究成果が以下のように公開されています。

以下に、研究成果522から、担当機関やおもな研究課題などをご紹介します。

○研究期間・予算区分

2008年度〜2012年度
農林水産省農林水産技術会議 生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発研究

○研究担当機関

独立行政法人
農業・食品産業技術総合研究機構、農業環境技術研究所、水産総合研究センター、産業技術総合研究所

大学等(委託先)
北海道大学、東京海洋大学、茨城大学、岐阜大学、広島大学、九州大学、佐賀大学

都道府県・財団法人(委託先)
財団法人函館地域産業振興財団 工業技術センター、宮崎県総合農業試験場、岩手県農業研究センター、新潟県農業総合研究所、地方独立行政法人 北海道立総合研究機構、福島県ハイテクプラザ、埼玉県農林総合研究センター、福岡県農業総合試験場、宮城県古川農業試験場、財団法人食品薬品安全センター

○主任研究者

主査

(独)農研機構 食品総合研究所 理事(所長) 林 徹(2008−2012年度)

プロジェクトリーダー

(独)農業環境技術研究所 研究コーディネータ 與語靖洋(2008−2012年度)

チームリーダー

(独)農研機構 食品総合研究所 食品安全研究領域長 川本伸一(2008−2012年度)

課題リーダー(1 麦類のかび毒汚染防止・低減技術の開発)

(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター 赤かび病研究チーム長 中島 隆(2008−2010年度)

(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター 生産環境研究領域(病害G)上席研究員 平八重一之(2011−2012年度)

課題リーダー(2 生食用野菜における病原微生物汚染の防止・低減技術の開発)

(独)農研機構 野菜茶業研究所 野菜・茶の食味食感・安全性研究チーム長 堀江秀樹(2008−2009 年度)

(独)農研機構 野菜茶業研究所 野菜生産技術研究領域 主任研究員 木嶋伸行(2010−2012年度)

課題リーダー(3 畜産物における病原微生物のリスク低減技術の開発)

(独)農研機構 動物衛生研究所 寒地酪農衛生研究領域 上席研究員 内田郁夫(2008−2012年度)

課題リーダー(4 水産物における病原微生物のリスク低減技術の開発)

(独)水産総合研究センター 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター 衛生管理グループ 主任研究員 里見正隆(2008−2012年度)

課題リーダー(5 病原微生物の迅速検出技術および効果的な殺菌・制御技術の開発)

(独)農研機構 食品総合研究所 食品安全研究領域長 川本伸一(2008−2012年度)

○研究課題

1 麦類のかび毒汚染防止・低減技術の開発

1)大麦のかび毒蓄積に及ぼす追肥および粒厚選別の効果の検証と追加防除時期の検討

2)暖地・温暖地における麦類の開花期予測と追加防除要否判定技術の開発

3)寒冷地における小麦の開花期予測と追加防除要否判定技術の開発

4)薬剤耐性を持つ麦類赤かび病菌の遺伝子診断と伝搬抑制技術の開発

5)田畑輪換・不耕起栽培等の栽培管理手法のリスク評価に基づくかび毒低減技術の開発

6)小麦登熟期間中の糖組成と菌体量をマーカーにしたかび毒低蓄積性品種選抜技術の開発

7)関東以西における麦類品種のかび毒蓄積性に基づく赤かび病抵抗性の再評価

8)北海道・東北における小麦品種のかび毒蓄積性に基づく赤かび病抵抗性の再評価

9)かび毒分解菌の探索・育種・機能解明と利用技術の開発

10)小麦のかび毒汚染低減のための追加防除時期の検討とかび毒分解菌の利用技術の開発

11)北部九州麦作地域におけるかび毒制御技術の開発と現地実証

12)関東麦作地域におけるかび毒制御技術の開発と現地実証

13)北海道冬小麦地帯におけるかび毒制御技術の開発と現地実証

14)北海道春小麦地帯におけるかび毒制御技術の開発と現地実証

15)小麦の製粉工程、調理工程におけるDON およびNIV の動態解明

16)蛍光偏光免疫測定法を用いた麦類かび毒スクリーニング手法の開発

17)スペクトルイメージングによるかび毒の簡易・迅速・その場スクリーニング手法の開発

18)麦類のかび毒に関する多種同時分析法の開発

19)麦類のかび毒分析の信頼性確保のための外部精度管理システムの開発

2 生食用野菜における病原微生物汚染の防止・低減技術の開発

1)葉菜の栽培過程における腸管出血性大腸菌の生産物への混入低減技術の開発

2)腸管出血性大腸菌による果菜可食部汚染のリスク解明と低減技術の開発

3)野菜の栽培過程におけるサルモネラ汚染低減化技術の開発

4)牛ふん堆肥化過程における肥効性を確保した食中毒原因菌低減化手法の確立

5)野菜生産環境における食中毒原因菌リスク評価のためのサンプリング方法の開発と微生物試験の外部精度管理による検査手法の信頼性向上

6)生食用野菜生産環境からの食中毒菌の検出手法および可食部汚染低減手法の実証と改善

7)葉菜生産段階における用水の微生物的リスク評価法の開発

3 畜産物における病原微生物のリスク低減技術の開発

(1)病原微生物排泄制御技術の開発

1)カンピロバクター環境抵抗性の解析と腸管内定着阻止技術の検討

2)DDSを用いた鶏卵のサルモネラ汚染防除技術の開発

3)放出選択的ドラッグデリバリーのための無機カプセル材料の研究開発

4)プロバイオティクスを利用したニワトリのサルモネラ属菌排泄制御技術の開発

5)プレバイオティクス利用による牛の腸管出血性大腸菌排泄低減技術の開発

(2)病原微生物の疫学情報および遺伝子統合データベースの構築

1)家畜由来サルモネラにおける細菌学的疫学指標のデータベース化

2)牛・豚が保有する病原性大腸菌の細菌学的特性の解明と疫学的解析基盤の構築

4 水産物における病原微生物のリスク低減技術の開発

1)沿岸漁場および水揚げ場における腸炎ビブリオの動態解明

2)沿岸海域および水揚げ場におけるバルニフィカスの動態解明

3)培養併用FISH 法を用いた食中毒細菌一斉検出法の水産物への応用

4)鮮魚水産物加工流通工程におけるリステリア菌の動態解明

5)乳酸菌バクテリオシンによる制御法の開発

6)紫外線・オゾン・電解処理海水を用いた除菌洗浄による初発菌数の低減および高静水圧処理による生鮮魚介類の生菌数低減化技術の開発

5 病原微生物の迅速検出技術および効果的な殺菌・制御技術の開発

(1)病原微生物の迅速検出技術開発

1)食中毒菌迅速多重検出キットの性能確認と応用

2)生鮮野菜からの病原微生物の蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法に基づいた多重定量法の開発

3)鶏肉のカンピロバクター属菌の迅速同定法と定量法の開発

4)特異的遺伝子の多重検出によるサルモネラ血清型迅速同定法の開発

5)周辺技術を応用した糞便材料調製による病原微生物の迅速検出法の確立

6)生食用食品の温度管理インジケータの開発と利用

7)生産・流通過程における病原性微生物挙動予測手法の開発

(2)病原微生物の殺菌・制御技術開発

1)青果物の食中毒細菌汚染・付着防止技術の開発

2)高品質な生食野菜加工品製造のための効率的かつ適切な微生物制御技術の開発

3)高品質な芽もの野菜製造のための効率的かつ適切な種子殺菌技術の開発

4)アクアガス等による農産物の高品質殺菌技術の開発

5)物理・化学処理を用いた腸炎ビブリオ低減化技術の開発

6)水産物・加工品のリステリアの静菌・殺菌技術の開発

7)鶏卵殻の微生物検査手法検証と安全で効果的なサルモネラ殺菌技術の開発

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