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農業と環境 No.177 (2015年1月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第4回生物起源微量ガスワークショップ 報告

11月20日と21日の2日間、文部科学省研究交流センター(つくば市)で、第4回生物起源微量ガスワークショップが開催されました。

このワークショップは、生物起源揮発性有機化合物(BVOC)など、生物が発生・吸収に関係するさまざまな微量ガスを対象とする、学際的な研究集会です。これまで、2008年に静岡県立大学、2010年に京都大学、2012年に琉球大学で開催されました。4回目の今回は、谷晃先生(静岡県立大学)を委員長とするワークショップ実行委員会が主催し、(独)国立環境研究所と JapanFlux の共催、(独)農業環境技術研究所と(独)森林総合研究所、AsiaFlux の後援で開催されました。参加者は45名で、農環研からは実行委員の米村、小野(大気環境研究領域)を含め、4名が参加しました。なお、本ワークショップの連携企画として、前日(11月19日)に、農環研の主催で 第28回気象環境研究会 「生態系の大気微量ガス交換と大気浄化機能」 を開催しました。

今回の生物起源微量ガスワークショップでは、(独)森林総合研究所に滞在中の Jukka Pumpanen 博士(ヘルシンキ大学)による 「Feedback mechanisms in below-ground carbon allocation, soil processes and trace gas fluxes (地下部の炭素の分配、土壌プロセス及び微量ガスフラックスにおけるフィードバック機構)」 と 「BVOC emissions from forest floor (林床からのBVOC放出)」 という二本立ての招待講演がありました(写真)。


招待講演のようす(第4回生物起源微量ガスワークショップ)

また、農環研の林健太郎主任研究員(物質循環研究領域)が、水田でのアンモニアの交換動態について、米村が、二酸化炭素(CO2)の安定同位体を用いた葉内コンダクタンス(微量ガス交換の重要なパラメータ)の測定システムについて、それぞれ発表を行いました。特別セッション 「植物アロマのメタ代謝」 では、「媒介虫アザミウマを誘引するトスポウイルス」 と題する、釘宮聡一主任研究員(生物多様性研究領域)との共同発表がありました。

前回までのワークショップでは、生態系全体での BVOC 発生量など、生態系フラックスに関する研究発表が主流だったのに対し、今回は、根圏や土壌圏での BVOC の動態、BVOC のエアロゾル生成への関係、植物アロマのメタ代謝などの研究発表が多くなっており、生態系における微量ガス動態の生態学的な意義の解明や実学的な応用研究も含めて、生物起源微量ガスの研究がさまざまな方向に展開している印象を受けました。農環研としても、これらの研究に貢献できる点が多分にあると感じました。

米村正一郎・小野圭介 (大気環境研究領域)

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